ちょい虹:映画情報、読書感想ブログ

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この時代を生きるための、今観ておきたい、おすすめのドキュメンタリー映画傑作5本。

ROAD TRAVESTI MOVIE by SIR MISTER LOUIS


視覚、聴覚と言葉という様々な感覚を使って味わえる映画というメディアは、今の時代に起こっていることを疑似体験するにも最適。こんなことが起こっていたなんて!と知らない世界を教えてくれる映画、家族や社会について考えさせてくれる映画をチョイスしました。

 

 

「フェイク」森達也監督


映画『FAKE』予告編

2016年7月現在、上映中!

ゴーストライター問題でマスメディアに騒がれた作曲家、佐村河内守氏。

しかし本当に彼は聴覚障害を「偽っていた」のか??また、作曲はしないまでも共同作業として新垣氏と共にタッグを組んで曲作りをしていたのではないか??

という疑問が最近上がっている。

 

マスメディアは、ある人物を過剰に誉めそやしておいて、何か叩きどころが見付かると、手のひらを返したように一方的に叩きまくる。あたかもそれが正義のような顔をして。

オウム真理教事件の時は、教団内部に泊まりこむなどして潜入取材し、世間からオウムを見る視線と、内部から外を見る視線がいかに違う世界のように違和を見せるかを、体感させてくれる「A」「A2」という傑作ドキュメンタリーを撮った森達也氏の最新作。

ドキュメンタリー映画を撮る時は、自分は鬼畜になって人を傷つけるので、そこから回復するまで時間がかかるという森監督。

何が真実かなんて、簡単には決められないんじゃないか、という森監督のスタンスは、敵/味方、善/悪、正/不正という二項対立にすぐ持ち込んでしまいがちなメディアの体質へのカウンターになるだろう。

・・・確かに、佐村河内氏はずいぶんとバッシングを受けたが、この世の中には、芸能人のゴーストライターがいるのは、ほぼ暗黙の了解になっていたりもする。また佐村河内氏はプロデューサー的役割をして、曲の設計図を書いて、新垣氏に発注していたという。そして実際の譜面に起こすのは新垣氏だったわけだ。そのことで佐村河内氏は作曲料金も払っていたという。そういう契約だったのなら、なんでわざわざ新垣氏はバラしてしまったのかも、経緯が謎であるが、思った以上に、曲を作ったのは誰か判断するのは難しい。

このドキュメントとあわせて読みたい漫画が

「淋しいのはアンタだけじゃない」吉本浩二である。

 

知られざる聴覚障害の実態について迫ったドキュメント漫画。「フェイク」を撮影中の佐村河内氏と森監督も登場する。佐村河内氏は50デシベルの感音性障害だった。このレベルでも日常会話は困難で、補聴器が必要である。簡単に「聴こえてる」とは言えないのだった。

 

「いのちの食べ方」ニコラウス・ゲイハルター監督


OUR DAILY BREAD (いのちの食べかた)

「だれもが効率を追求した生産現場の恩恵を受けている。それなのに、その現場を知っている人は本当に少ないのです」とゲイハルター監督。

2005年、ドイツのドキュメンタリー。

ドイツらしい、細部まで克明に映し出された、透明感のある非常に美しい映像で、

食品の大量生産現場を大スケールで描き出している。

アボカド畑、みっしり詰まったヒヨコから、食肉解体工場、乳しぼり工場まで・・・。

乳搾り工場では、牛の出産や母牛が仔牛に授乳するという場面すら、徹底的に無機的に機械化されている。食肉解体工場では、生きた豚が処理され、ベルトコンベアに乗って、じゅんじゅんに食肉に解体されていく。

わいはこの映画を観て、なるべく自分でも狩れる動物以外は食べないようにしたい・・・と思うようになったのだった。(今でもたまに牛や豚食べちゃってるケド)

閉じ込められている動物たちは、そのまま、ぎゅう詰めの人間社会のメタファーにもなっている。満員電車で運ばれていく人々の群れとオーバーラップしてくる。

大量生産の食品を食べている人間たちも、大量生産品になってしまうのかもしれない。

 

この映画は、ともかく何の意見も差し挟まず、現場を淡々と映像美をもって映し出していくところが、なかなかすごい。

 

「はちみつ色のユン」ユン、ローラン・ボワロー監督


映画『はちみつ色のユン』予告編

この映画、映画館で見て、号泣した・・・というか、観ている最中に何度も嗚咽をこらえた数少ない映画。2011年ベルギー映画。

朝鮮戦争の後に、孤児となった20万人を超える子供たちが、養子として西欧に引き取られていった。これは、そんな数奇な運命を味わった孤児の一人、ユンが、自分の生い立ちを描いたアニメーションによるドキュメンタリ。

生きづらさを抱えながらも、ユンは成長し、今は人気の漫画家になっているのである。日本の漫画が大好きだったというユン監督の絵柄は、「AKIRA」の影響なんかも見られる。YMOを大音量で聴き、日の丸鉢巻をしめて空手チョップするユン少年だった。

西欧の中で数少ないアジア人として生きる葛藤、血縁家族の中で、血の繋がらない子供として、金髪の兄弟と一緒に育ち、時に自分は本当に愛されているのかを疑う。

そんな彼の孤独を時にコミカルに、時に抒情的に描き出している。

本当の家族って何?と考えさせられる、心にしみる家族映画、ある種の青春映画ともなっている。

「はちみつ色」というのは、養父母が、ユンの黄色い肌の色を「はちみつ色」と呼んだことに由来。なんて素敵なネーミングだろう。こんなとこにも希望と願いが託されているような。

 

「自由と壁とヒップホップ」ジャッキー・リーム・サッローム監督


映画『自由と壁とヒップホップ』予告編

 イスラエル国内で、圧政の下暮らす、パレスチナ人の若者たちの物語。

オリーブ畑をイスラエル軍につぶされたり、家屋をブルドーザーで破壊されたりするのは日常茶飯事。バスに乗っても、つねにテロリスト扱いされる。

そんな中、子どもたちは経済的困窮などからも、麻薬密売に手を染めてしまう子も多い。

そこに、歌の力の出番である。

怒り、悲しみ、不安をラップにして口ずさむ、伝え合うのである。そうすることで、歌うことが生きるよすがになる。武器よりもアートで戦っていくことができるようになる。

そして登場するパレスチナのラップグループ、「DAM:」の曲は本当に格好いい。

予告編でも聞ける。アラビア語のラップも乙なものである。そして力強く生きる彼らの歌に、こちらが勇気づけられてしまう。励まされてしまう。

もともと人種差別化で抑圧された黒人の若者たちから始まったラップミュージックというのは、社会への異議申し立てと密接に結び付いている音楽なんだなあ、というのも、ひしひし感じたのであった。

 

「新しい神様」土屋豊監督


The New God 「新しい神様」 - Trailer 予告編

現在は、貧困やホームレス問題に取り組んでいる作家の雨宮処凛氏だが、実は彼女はかつて、愛国的右翼ロックバンドで激しい歌をうたっていた。

幼少期に激しいいじめを受け、自殺未遂を繰り返していたという雨宮は、その後エックスジャパンの追いかけを経て、「維新赤誠塾」というパンクロックバンドのボーカルとして活動していた。

今と全然服装も違って、ケバい感じ。金髪に近い茶髪に、ビジュアル系バンドっぽいメイク。とんがっている。

そんな彼らの日常を追ったドキュメンタリー。

考えを異にする監督とのやり取りや、北朝鮮への渡航と、日本赤軍のおじちゃん達と酒を酌み交わすという蛮行(!)などをする中で、次第に変化していく彼女の軌跡が面白い。

とんがりながらも、どこかホンワカして、鋭いところは鋭く気づく彼女のキャラクターも魅力的である。

 

まとめ

ここ数年で、とても心動かされたドキュメンタリーをまとめてみました。

 

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