ちょい虹:映画情報、読書感想ブログ

キャッチコピーや映画、書評などを中心としたブログです!

ビューティフル・マインドの感想。天才数学者の数奇な生涯と、純愛が心に染みる。【アカデミー賞受賞作】

美麗境界 The Beautiful Mind

 2002年にアカデミー賞作品賞に輝いた名作。

 最初のうちは、不器用な変人学生を描いたヒューマンドラマ(いい話)かと思いきや、突然ペンタゴンなど機密組織の暗躍に主人公が巻き込まれるので、サスペンスか、歴史ものかと思いきや、実はそれが主人公の妄想だった・・・という、ともかく真実のフェーズが二転三転していくスリリングな映画。

 主人公のモデルは、ジョン・ナッシュという天才数学者で、ノーベル経済学賞も受賞した実在の人物。「ゲーム理論」の創始者でもある。

 どんなものだったかレビューします。

 

 

「ビューティフル・マインド」のあらすじ

 ジョン・ナッシュは、数学にかけては天才的な頭脳を持つ特待生である。しかし、そうとう変わり者で人付き合いも悪く、女性を口説くのも下手だ。「君の論文読んだけど、あの解き方は平凡すぎて、いいとこないね」とハッキリ言ったり、講師になれた時には、「こんな授業なんか君たちにとって時間の無駄だ、そして何より僕にとって時間の無駄だ」とか言いつつ黒板に向かうという型破りな教師となっている。悪意があるというよりは、ともかく常人からはズレているのである。

 そんなジョンは、数学の天才であるから、あらゆるところに法則を見出すことにかけても天才的である。餌をついばむ鳩の群れの動き方、異性の後を追う人間の動き・・・なんにでも法則を立てる。

 すると、この能力に目を付けたアメリカ政府のエージェントがジョンに近づき、ロシアの隠している暗号を解読する仕事を託す。その暗号は雑誌や新聞の見出しなど、あらゆるところに隠れている。この仕事に携わったジョンは、秘密組織から追われる羽目になり・・・せっかく恋に落ちて結婚した家庭にも危険が迫る・・・。

 ところが、この秘密組織や、政府のエージェントの件はすべてジョンの妄想だったのだ。ジョンは統合失調症にかかっていたのだった。精神病院でのショック治療の後、自宅に戻ったジョンだが、薬を飲むと計算ができなくなるので、そっと隠していた。そしてまた幻覚を見始めてしまう。再度のショック療法を迫る医者だが、ジョンは、違うやり方があるはずだ、自分はその方法を見つけられる、と主張する・・・。

 

「ビューティフル・マインド」の監督やキャスト

監督・・・ロン・ハワード

出演・・・ジョン・ナッシュ役=ラッセル・クロウ

     アリシア・ナッシュ役=ジェニファー・コネリー

     パーチャー役=エド・ハリス

「グラディエーター」でアカデミー賞(オスカー)主演男優賞を受賞しているラッセル・クロウは、筋肉隆々の戦士役の印象が強かったが、本作では、ちょっとオタクっぽくて、おとなしい、運動はまったくできなそうな学者を、とてもうまく演じている。

 奥さんのアリシア役は、ジェニファー・コネリー。イェール大学にも通った才媛で、知的で色っぽい女性を演じている。本作でアカデミー助演女優賞を獲得した。

 

ビューティフル・マインドの上映時間や日本公開日

  • 上映時間・・・136分
  • 日本公開日・・・2002年3月30日
  • 配給・・・UIP映画
  • ジャンル・・・ヒューマンドラマ、サスペンス

ビューティフル・マインドの感想・評価(多少ネタバレ)

 前半は、この先どうなるのか予想も付かないハラハラドキドキ感がある。

恋愛物語の側面ありーの。

最初は、単なる天才数学者のいい話かな~と思わせる。

変人だけれど、気のいいルームメイトに恵まれ、彼を遠巻きに眺める同期の学生たちとも、時に交流する。

 そして彼は女性を口説くのも下手。ともかく変人なのでストレートに物事を言わないではいられない。なので「まず段取りとしては、色々こなさなければいけないのだけれど、ともかく最終的には、どうだろう、我々はHをしようではないか」みたいなことを言って、ブロンドの女子学生に、思いっきり頬っぺたを引っぱたかれる。

 でも、講師になってからは、MITの教え子であったアリシアに食事に誘われ、付き合うようになった。そしてはじめの頃のデートで「僕は、変なやり方でしかものが言えないんだ。だから人に嫌われる」という。「試しに私になんか言ってみて」というアリシアに「恋には色々段階を踏まなければいけないのは分かっている。でも僕はすぐにでも君と寝たい」と言ってしまうw

 アリシアの返事は、ビンタではなく、甘いキスであった。確かに、見知らぬ人からこんなセリフを言われればキモイだけであるが、好きな人から言われたら、相当ドキドキするだろうな。そして二人はめでたく結婚。

陰謀渦巻くスリルとサスペンスありー。

 ナッシュは、その暗号解読の才能を買われて、政府の機密組織の仕事を依頼される。そこで、新聞や雑誌などに隠された暗号を解いては、とある邸宅の秘密のポストに投函する。そして腕には、妙なモニタを埋め込まれてしまう。そこに現れてくる数字を解くことが使命なのだ。

 そしてある時には、ロシア側に追われ、車での追跡劇と銃撃戦も体験する。こんな契約をした覚えはない、妻は今妊娠しているし、もうおりたい、とアージェントに告げるナッシュ。だが、エージェントは任務を解除してくれない。

サイコ・サスペンス、ホラーチックに!

 だが、これがすべて妄想だったことが分かる!このあたりの切り替わり部分が、ものすごくスリリングに表現されていた。講演中に、スーツを着た怪しげな人物に追われ、拘束されて車に乗せられ、運ばれていくナッシュ。

 ところが、目覚めるとそこは精神病院だった。で、しばらくどっちが真実なのか曖昧なのだか、次第にナッシュの妄想であったことが分かる。なんと気のいいルームメイトも実際には存在せず、ナッシュが頭の中で作り上げたものだったのだ。

 アリシアが、ナッシュが仕事で使っていた離れに入ると、その小屋の内側には、新聞や雑誌の切り抜きがびっしりと壁中を埋め尽くしていて、わけのわからないメモ書きがされている。もう見るからに精神錯乱した光景で、ゾッとする。さらにナッシュにつきまとう幻覚のルームメイトや彼の姪、エージェントは幽霊みたいだから、さらに怖い。この辺はほとんど、ホラー映画っぽいテイストになっていて、結構怖かった。

でも最後はいい話

 その後は、妻アリシアと協力して、なんとか病気を克服しようとする姿を描く。子供も大学生になり、ナッシュはプリンストン大学の図書館で、リーマン予想の解明に取り組んだり、時に奇妙な行動をとってしまい、怪しい意味での有名人として、若い学生たちから、からかわれたり軽蔑のまなざしで見られたりしている。

 だが次第に、彼が若いころに博士論文として出した理論が注目を集め、ついにノーベル賞を授与するという話まで出てくることになる。受賞の席でナッシュが語ったのは、数式や理性・理論の世界を超えた、自分を支えた愛についてだった。

現実のナッシュとは違うかも?

 現実のナッシュの人生を、もっと映画向きに脚色している部分は色々ありそうだった。しかしジョン・ナッシュが、アメリカの軍事戦略に貢献したランド研究所で働いていたことは確かなようで、もしかするとここでの体験が、「共産主義者が自分を狙っている」などといった妄想にも繋がっていたのかもしれない。

 ともかく小さい頃から神童だったようだが、同時に人を寄せ付けない変人ぶりでも知られていたみたい。たぶん、映画で描かれるよりも、もっと付き合いにくい変人だったんじゃないかと予測する。 

まとめ 

 この映画は、大きくいえば、「恋愛もの」として区分できるかもしれない。あとは天才や奇人変人の伝記って皆好きだと思うのだが、そういう「伝記もの」としても。「恋愛」「愛の力」の側面が強くアピールされていたので、カップルで見るにはいい映画だと思う。

 「何が真実だか知りたい?これが真実よ」と、ナッシュの手を取り、自分の顔にあてる妻アリシアのシーンや、不器用なナッシュのアリシアへの深い愛情が感じられるシーンは、けっこうグッとくる。例のストレートすぎる求愛文句にしても。

 おどおどした挙動不審な奇人・天才を演じきったラッセル・クロウは本当に名演技である。

スポンサードリンク