昔からキライではなかったんですがそんなに観てもいなかったバイオレンス・マファア系ムービー。このたび「孤狼の血」を見たら、どこかでまだ炭火状態だった、フィルム・ノワール好きの血がメラメラ燃えてきてしまったようですw
そんなわけで、ここのところ、立て続けに初心者向けともいうべき、定番を見ている毎日。
おすすめの鉄板映画と、見どころを解説したいと思います♪
色んなテイストの映画をピックアップしてみましたので、どれかはお気に入りの一本が見つかるのではないかと思います。
★目次★
- 「仁義なき戦い」シリーズ
- 県警対組織暴力(1975年)
- 日本で一番悪い奴ら(2016年)
- 凶悪(2013年)
- アウトレイジ(2010年)
- アウトレイジ・ビヨンド(2012年)
- トレーニングデイ(2001年)
- フェイク(1997年)
- ノー・カントリー (2007年)
- フィルムノワールまとめ
「仁義なき戦い」シリーズ
かの有名な仁義なき戦いシリーズ。今では、数々の番組などでパロディにも使われたりしてますよねw
元祖ヤクザ映画のこのシリーズは、とにかくリアル昭和の男たちの汗臭い、泥臭い芝居が魅力になっています。
しかも、実録。実際にいた暴力団組長の美能幸三という人物の獄中手記を基にして作られています。(美能氏は、服役後カタギになったそうです)
映画の撮影現場でも、撮影後は本物ヤクザとチームが飲みに行ったりなどしていたようで・・・汗
そういうところからも、リアル感が滲み出している、独特な作品です。
リアル昭和の男たちは、ナチュラルに野性的!!なのがビシビシ伝わってきます。
まあ戦争直後で、本当に殺し合いをさせられてきた後で、日常的にコロコロ人が死んでいた時代です。そして戦後の物資不足で、誰もが生き延びるためにガツガツしていた時代。
まあ役者さん達は、それよりは若いですが、菅原文太なんかも、1933年生まれ。終戦時は12歳だったわけで、この飢えた時代の空気感を知っているのでしょう。ナチュラルで動物的な野生感があります。
体つきもやはり、現代人と違う気がする。顔と尻がゴツくて、四角い(笑)
現代人男性は、割とシュッとしている人が多いですね。
だから、「仁義なき戦い」のヤーさん達は、意外と見た目や物腰などは、そこまで一般人と変わりません。そこらへんの土方の兄ちゃんみたいな感じ。
でも皆、建設業者出身だったとしたら、ガタイはかなり良かったでしょうな・・・。
なんというか、暴力がある意味当たり前の日常という感じなのです。別にオラオラとヤクザ感を出す必要もない感じ。
この時代には一般人とヤクザの境目って、今よりも曖昧だったでしょうね・・・。
それから、やはり現代の平成の役者さんたちよりは、生まれ持った凄味は上だなあ、と感じました。動物的な迫力が違う。時代のせいでしょう。いっけん普通の格好なのに怖いです。狂気というよりは、豹とか狼とか、そういう野性な怖さです。
だから、この「仁義なき戦い」シリーズを見て、この怖さに触れると、現代の役者さんの演技の凄味が物足りないのは分かる気はする・・・。ま、役所広司はそのあたり稀有で、少なくとも暑苦しさは負けてないです。
ただ、個人的には、泥臭すぎて、物足りないところも。
まあストーリーで魅せるというよりは、やはり「実録」ということを売りにしているので、巧妙に組み立てられたプロットがあるとか、どんでん返しがあるとか、そういうものではありません。
それから、ヤクザがお互いに裏切りまくりだし、親分は子分に責任押し付けるし、なんかスーパー・ブラック企業を見せらているようで、感情移入が難しいです(;^_^A
まあ菅原文太が、その中でヤクザ稼業に愛想をつかしているので、ここが感情移入の入り口かな。
あと、やたら沢山人が出てくるから覚えられないし、戦争の構図がよくわからなくなってくる。しかも、どんどん互いに裏切り始めるから、ますます誰が誰と戦っているのか分からなくなってくる(;^_^A 当時の観客はちゃんと人間関係を把握できてたのか?凄い・・・・。
あらすじを確認してから見るのをおススメします。
ま、こんなわけで「仁義なき戦い」は、泥臭さを肯定するか、イマイチとするかで評価が分かれるでしょうね。ファンには、この実録な泥臭さがたまらないのでしょうが。
それから男女の絡みが一回は出てきます。男の、刺青入れた裸の背中と女性の半裸が見れます。
仁義なき戦い 1(1973年)
監督やキャスト
深作欣二監督
広能昌三・・・菅原文太
山守義雄・・・金子信雄
坂井鉄也・・・松方弘樹
あらすじ
第一作目。
若かりし頃の菅原文太が主役、美能の手記をベースにしています。
原爆投下後の広島。戦後の混乱の中で、海軍から服役した広能。
闇市で暴れ回るヤクザを、山守組組員にかわって射殺。刑務所入りする。
刑務所の中で、土井組の若頭と義兄弟の契りをかわし、出所後極道の世界に入ることになった。
しかし、土居組と山守組の抗争が勃発。
広能は、土居組の組長の暗殺係として名乗り出る。山守組組長は感激し、「お前が出所したら全財産ゆずっちゃる」と約束。
その後、土居組は壊滅し、山守組は朝鮮戦争の好景気も受けて、勢力を拡大。麻薬ヒロポンでも稼ぐようになる。しかし組織が大きくなりすぎたのか、今度は内部紛争が勃発した。
坂井派と新開派である。坂井は山守組長を脅して実権を取り上げた。山守組長は出所してきた広能に、今度は坂井を片付けるよう頼みに来るのだった。
しかし、全財産渡すという気配などまるでない・・・。
みどころ
何といっても、リアルな歴史が絡んでいるのが物語に重みを与えてます。広島に暴力団が増えたのは、原爆投下後の復興工事で、沢山の気の荒い人足が集まって来て、土建屋が次第に暴力団化したとのこと。
ある意味で、原爆という暴力が、ヤクザに流れ込んだともいえるので、興味深いですな。それに朝鮮戦争も、山守組の発展に直接関係があるというのもポイント。
そして、やはり若かりし菅原文太がいい!
お互いに裏切りあう、なんともはやな仲間たちの間で、嫌悪感を浮かべつつ、妙にいさぎよく暗殺の役目を勝ってでます。
個人的には、背中にどーんと彫られた鯉の刺青が好き。
一番の見どころは、ラストの葬儀シーンでしょう。仲良かった坂井が暗殺されてしまい、その葬儀に行って、山守組長を討つのかと思いきや、遺影や花束に向って発砲する広能。
裏切りつつ、葬儀をあげる欺瞞に憤ったのでしょう。そして山守組長がとめようとすると、「弾はまだ残っとるがよう」(あんたを撃つこともできる、という意味でしょう)といって去る。カッコいい!
山守組長を演じる金子信雄の、情けなくて、随所で泣き落としをする親分も、味があります。商売が上手くて、市議会議員にもなった親分。そして奥さんに、しょっちゅうしっかりしろ!とどやされるあの姿もイイ。
仁義なき戦い2 広島死闘編
監督やキャスト
深作欣二監督
山中正治・・・北大路欣也
大友勝利・・・千葉真一
上原靖子・・・梶芽衣子
広能昌三・・・菅原文太
山守義雄・・・金子信雄
坂井鉄也・・・松方弘樹
あらすじ
山中は割と素直で純朴なところもある青年なのだが、血の気が多い。ひょんなことから食堂でヤクザに絡まれリンチされていたところ、村岡組組長の親戚、靖子に助けられた。村岡組組員となるが、靖子とねんごろになってしまい、組長の逆鱗に触れて、九州に逃れる。
やがて山中は頭角をあらわし、それを認められて村岡組に戻って靖子との仲も認めてもらえた。
だが、抗争の中でヒットマン役を担わされた山中は、暗殺後、長く服役することになってしまい、靖子とは離れ離れに。
しかも靖子の叔父の組長は、その間に靖子を他の男と結婚させようとするのだった。
その噂を獄中で聞いた山中は思い余って脱獄してしまう。しかし叔父は機転をきかせて靖子を呼び戻したため、山中は噂は嘘だったと恥じることに。
やがて対立する大友勝利の暗殺を買ってでる。それがきっかけで大友を逮捕に追い込む。だが脱獄犯として追われ、また叔父の裏切りは本当だったことも判明し、一人自殺するのだった・・・。
みどころ
有名な梶芽衣子が出演してます!梶演じる靖子と山中の悲恋物語みたいになっているのがポイント。そして身を犠牲にして仕えた組織に裏切られ、最後は一人自殺するという、なんとも可哀想な山中が主人公です。
1話目よりも、ドラマ性が増して、また大友勝利というトリック・スター的な変なキャラが登場しているのもポイント。大友組組長の銅鑼息子で、ど派手な服装をして、ともかくハチャメチャに暴れ回る役どころ。敵を拳銃の試し撃ちの的にしたりなど残虐。
公開当時は、この大友のヘンテコキャラが人気を呼んだそうです。
しかし本当に、組織に裏切られて一人世を去るというのは、なんだか日本のリストラされたサラリーマンの悲劇みたいにも思えますなあ・・・。意外と企業戦士も共感していたのかもしれん・・・。
県警対組織暴力(1975年)
監督やキャスト
深作欣二監督
菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫他出演
あらすじ
舞台は昭和三十八年の広島県(?)。
暴力団大原組と川手組の抗争が続いている。
倉島警察署の刑事、久能徳松(菅原文太)が主人公。
久能はマル暴担当の敏腕刑事だが、ヤクザと完璧に癒着している・・。
というか昔からの友達。
大原組の若頭広谷(松方)と特に仲が良く、一緒に川手組が大きくなるのを阻止しようとする。
だが、県の上層部は川手組と繋がりがって、大原組を潰そうとするのだった。
そして、海田警部補(梅宮辰夫)が、中央から倉島署に送られてくる。
海田は、今までのような暴力団となあなあの捜査状況は許さんとする、清廉潔白過ぎなところもある刑事であり、折角味方していたヤクザの信頼を裏切るようなことを次々としてしまう。
やがて久能と広谷の間にも亀裂が入り始めてしまう・・・。
みどころ
ある意味では、まだノンビリしてた時代といえばそうかも。
地方警察と暴力団には、昔ワルだった不良少年仲間達が、双方に所属している。
喧嘩が強くて、極道になってしまった者と、警察官になった者。
でも、元が喧嘩仲間だから、普通に飲み歩いて、その中で交渉してバランスを取っている。
なんというか、国と国との外交もかくやと思わせる感じ・・・。
まだ政府側と暴力団の間に、垣根がそんなにない。格好や喋り方などでも、ほとんど見分けつかないし・・・。
これを見ていると、清廉潔白すぎる海田じゃなく、暴力団と癒着しているはずの主人公に感情移入してしまうのが面白い。
しかし、県の上層部も暴力団と癒着しているし、登場人物を善悪で分けておらず、ある意味ロミオとジュリエットみたいに立場の違う位置に置かれたゆえに引き裂かれる男達の悲劇、といったらいいかも。
若い梅宮辰夫(ほっぺたツルツル!アンパンマンのよう)も、真面目すぎる警部補の役柄で、いい演技をしている。
日本で一番悪い奴ら(2016年)
監督やキャスト
白石和彌監督
諸星要一:綾野剛
山辺太郎:YOUNG DAIS
アクラム・ラシード:植野行雄(デニス)
村井定夫:ピエール瀧
黒岩勝典:中村獅童
あらすじ
諸星は、柔道が強いのだけが取り柄だったが、それを買われて北海道警察に就職。だが、なかなか成績が上がらない。
すると先輩刑事の村井に、暴力団の中に情報提供者を作れとコツを教えられ、自分の名刺を関係者に配ってまわった。
やがて密告があり、薬物を押収。それからもコネを利用してチャカなどを次々と押収、署内でも一目置かれる。
だが諸星はどんどん違法捜査に深入りしてしまい、ついにはチャカをわざと密輸させてそれを摘発しようという計画まで立ててしまう・・・。
みどころ
本当に白石和彌監督は外道を描かせたら天下一!
しかも、映像センスもあるので、普通に画面が写真として綺麗である。
綺麗だが、そこに映されるのはゲスの極みオンパレード・・・(;^ω^)
中でも、白髪を振り乱したお婆ちゃんが、自分の腕に注射するシーンなどは、なんともエグイ・・・汗
しかも、これ実話を基にしているというのが、恐れいる・・・。北海道警察で実際に起きた事件である。この警官は薬物と銃の所持でつかまったのだが、違法なおとり捜査をしていた疑いがあり、日常的にヤクザにお小遣いを渡したりもしていた。
押収した銃も、おそらく裏社会での闇取引で入手したものだとされていて、そのための資金を工面するため薬物などを売りさばいていたという・・・。
面白いですなあ・・・遠い目
また諸星は柔道のせいで、いわゆる「餃子耳」になっているのだけれど、この耳のせいで刑事とバレそうになるエピソードがあったりと、耳が小道具(?)として、活かされていたのも良かった。
それからパキスタン人やロシア人など国際色豊かなアウトローたちが登場するのも面白い。
綾野剛も、平成の役者にしては、泥臭さがあるので、こういう汚れ役が似合いますねえ・・。
凶悪(2013年)
監督やキャスト
白石和彌監督
- 藤井修一 ・・・山田孝之
- 須藤純次 ・・・ピエール瀧
- 木村孝雄 ・・・ リリー・フランキー
- 藤井洋子 ・・・池脇千鶴
あらすじ
週刊誌「明朝45」(「新潮45」がモデル)の基に、ある死刑囚から手紙が届いた。
死刑囚須藤は、もう三人くらいあの世送りにしてしまって捕まっているのだが、実はまだ隠している余罪があるという・・・。
しかも共犯者はいまだにシャバにいて、のうのうと暮らしている。それが許せないので告発したとか。
藤井は、その事件の取材をするうちに、取りつかれたようになってしまい、家庭も崩壊寸前。家では痴呆の母を妻が介護しているが、もう限界と泣きつかれるのだった。
取材を続けるうちに、かなり事件の証拠が取れてきて、ついに明朝45は、それを記事として世間に発表するのだった・・・。
はたして須藤が「先生」と呼んで尊敬していた共犯者、木村を法廷に引きずり出すことはできるのか??
みどころ
ピエール瀧の存在感が凄い!さすが役所広司に「顔が暴力」(笑)と言われるだけのことはあるw
というか、役者としてもちゃんとここまで演技出来る人だったのか・・というのを発見しました。やはり電気グルーヴで馬の着ぐるみきて踊っている人、という印象が強かったので・・・。主役以上に主役で、人間くさい凶悪犯をいかんなく演じていました。
リリー・フランキーの、あの全身から胡散臭さを漂わせている雰囲気もいいですね。
主演の山田孝之の、無表情なんだけど、どんどんクマが濃くなっていく、とりつかれ感もなかなかいいです。
白石監督は、役者をとても魅力的に撮る人だと思います。
実際よりも1.5倍増しくらいで、かっこよく映し出している気がします。
あと、単なるキワモノ映画なのかな~と思ってみていると、かなり深みもあって、介護問題にも繋がって来るし、貧困に陥った家族が面倒な老人に抱く、あくまで普通の狂気もジワジワ炙り出されてきます。一歩間違えれば、そこらへんの平凡な誰もが、足を突っ込んでしまいそうな狂気です。
バイオレンスだけど、あくまで日常に潜んでいて、その分リアル。(これも実話がベースというのが凄い)
エグいシーン(グロいというよりは卑劣な)が多いので万人におすすめはできませんが、絵も綺麗だし、衝撃的な傑作。重すぎるテーマをピエールやリリーなどの役者の軽妙な魅力が救っている気がします。
アウトレイジ(2010年)
監督やキャスト
北野武監督
- 大友組
大友・・・ビートたけし
水野・・・椎名桔平
石原・・・加瀬亮
- 山王会本家
関内・・・北村総一郎
加藤・・・三浦友和
- 池本組
池本・・・國村準
小沢・・・杉本哲太
- 村瀬組
村瀬・・・石橋蓮司
- マル暴刑事
小日向文世
あらすじ
主人公でビートたけし演じる大友は、下請け係みたいなヤクザである。大元の親組織は、山王会。そこの大親分(北村総一郎)の下についているのが、池本組。そのさらに下についているのが、大友組という小さな組である。
いつも、上の組のしりぬぐい的仕事ばかりさせられている。
今回は、山王会の大親分が、配下である池本組と、系列外である村瀬組が兄弟杯をしたことが気に食わず、池本と村瀬をわざと仲違いさせようと画策する。
大友は工作を命令され、組員を村瀬組の経営している、ぼったくりバーにわざと引っかからせ、それをネタにして村瀬組と衝突する。
大友組は池本組の配下なので、池本組と村瀬組の仲にも亀裂が入るかたち。
山王会大親分は、少し喧嘩させるだけじゃ満足せず、村瀬組長を大友に襲撃させる。すると当然村瀬組の方でも、池本組を襲撃する。
互いに犠牲者が出るが、大親分はさらに、村瀬組長を始末しろと命じる。命令は池本に行くのだが、池本は直接手をくだせないから、その下請けである大友にさらに命令がおりる。
しかも大親分はその実行犯を担うことになった大友を、後から破門して片をつけようとする。これは理不尽。腹に据えかねて、大友は、かねてから大友組のカジノ事業を邪魔していた池本組長を始末してしまう。
そこで逮捕される。
一方、山王会の中でもナンバー2の加藤は、会長に違和感を感じていて・・・。
みどころ
確かにこれは、日本に生まれた、新しいヤクザ映画の傑作として評価できる作品に違いないでしょう。
何が違うのかというと、日本の正統派ヤクザ映画が、とにかく「熱い!」「暑苦しい!」という感じで男達の血と汗にまみれた画面だったのが、「アウトレイジ」はともかく「クール」で「冷たい」です。
これは北野武監督の、昔からの持ち味ですね・・・。どこか世界から一歩引いた、死後の世界から現世を眺めているような視点がある・・・。これが活きてます。
さらに、かの有名な「キタノ・ブルー」も健在。画面の色自体も、水色がかっていて、冷たいです。
また、舞台は現代。ピシッとした背広着て、お金儲けをする、ほとんど企業と見分けがつかなくなってきた暴力団を描いています。
なので、キャストも、いわゆる「コワモテ」ではない普通ぽくみえる人を起用してます。大友組ナンバーツーは、カタギっぽいハンサムな椎名桔平だし、大親分の北村総一郎も、池本組の國村準も、そんなにヤクザっぽい風貌ではありません。
これが逆にリアル。
あと、バイオレンスが、多分狙っているんでしょうが、かなり卑近なものを使っているので、逆に嫌です。歯医者さんで治療中を襲撃、歯医者のドリルで口をえぐる、とか、ラーメン屋のキッチンで、さいばしを耳に突き刺す・・・とか、ともかく痛みを想像できそうな感じが、見ててイヤ。。。というシーンが幾つか。
そして、ヤクザ映画は「血が滾る」とはよくいいますが、これは「冷えていく」。主人公大友が、末端の下請け業者というのも、なんとも哀愁があるし、不必要で理不尽な幹部の思惑に操られて、一人一人、この世を去って行き、「最後には誰もいなくなる・・」みたいな、諸行無常感あります。
仏壇の前でチーンと鈴を叩きたくなる・・・。ともかく無常。
そして死の気配が漂っています。あまり生きる気力が湧いてくる映画ではないです。そして黒人の登場人物の扱い方がなんかコメディぽいというか、ぎこちないというか、そこだけ浮いている感じもあって、モヤモヤしました。
けど、ヤクザ映画を刷新した傑作には違いないですし、見て損はないです。面白いです。ただ、やはり組同士の関係性が複雑なので、前もって相関図を見てから視聴するのをおすすめします!
アウトレイジ・ビヨンド(2012年)
監督やキャスト
北野武監督
大友・・・ビートたけし
木村・・・中野英雄
- 山王会
加藤・・・三浦友和
石原・・・加瀬亮
富田・・・中尾彬
- 花菱会
布施・・・神山繁
西野・・・西田敏行
- 警察
片岡・・・小日向文世
繁田・・・松重豊
- フィクサー
張・・・金田時男
あらすじ
前作の後、山王会は、元大友の金庫番だった石橋を仲間に組み入れて、いまや政治家にも影響を持つほどの大組織へと成長していた。
しかし、古参幹部を差し置いて、金もうけの才能があるが、まだ若い石橋をナンバーツーに取り立てたことで、幹部らの不満は限界に達していた。
マル暴刑事の片岡は、大きくなりすぎた山王会をつぶすために裏工作を始める。不満を持つ山王会幹部の富田を、山王会と友好関係にある、関西の花菱組へ行かせ、上への不満を相談させたのだ。
しかしこれがバレて富田は始末される。
そして大友が出所。片岡は、大友をかつての敵である木村と和解させ、復讐のために山王会を襲撃させようとたくらむのだが・・。
みどころ
今回も実によく出来ている。一作目よりまとまりはいい。
また、本作でも痛いシーンには工夫がされていて、バッティングマシーンを使った痛いシーンがあったりする・・・(^^;
それから、戦後の闇市で生き延びた韓国籍のマフィアで、日本と韓国をつないで暗躍している張が登場。大友をかくまってくれる。張が出てくる場面はわずかなのだが、韓国マフィアスタッフは長髪もいたりして、雰囲気が日本ヤクザと少し違うのが面白いし、こういう存在ってリアリティがあっていい。実際、こういう人も現実に割といそうである・・・。
椎名桔平が不在になってしまったので、本作ではあまり、イケメンが見れないのが残念ではあるが・・汗 おっさん率がさらに高くなった(笑)
マル暴刑事の片岡の、狡猾な笑顔に段々はまってくる本作だった。
やはり今回も全体的に、とても静かでスタイリッシュで、冷たい印象である。でも前作ほど「諸行無常」感はしないので、見終わったあとに、無常感を感じなくてすむ。
トレーニングデイ(2001年)
監督やキャスト
アントワン・フクア監督
デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク出演
あらすじ
ジェイク刑事は、麻薬捜査官に憧れて、志望を出したまだ若い刑事。
彼がバディを組まされたのは、黒人のベテラン麻薬捜査官、アロンゾ。
だが、アロンゾはかなりハチャメチャだった!
道でギャングを捕まえても、脅すだけ脅して無罪放免してしまうわ、
捜査官はヤクの味をおぼえなきゃだめだとかいって、ジェイクに麻薬を吸わせるわ、
ディーラーとも昵懇の仲で親しげに話している・・。
とまどうジェイク。
街のギャング達の噂では、アロンゾはカジノでロシア人マフィアと揉めて、追われているという。
そしてディーラーを押さえ込みに襲撃したアロンゾは、遂に一線を超えた姿をジェイクに見せつけるのだった・・・。
みどころ
日本の任侠映画が「血が熱くなる」系だとすれば、「トレーニングデイ」は、血が凍り付きます。見終えた後の感触は、そんなに良くありません・・・。「孤狼の血」で大上刑事も破天荒だし、かなりヤバいとこまでいってましたが、アロンゾは、その上を行くヤバさ・・・っていうかもはや犯罪者です。
デンゼル・ワシントンは、この映画でアカデミー主演男優賞とっていますが、本当にうまい!
そして、ストリートギャングのヒスパニックやブラックの人々、やはり日本人に比べて全然体格がいいので迫力が半端ないです。日本のヤクザ映画みたいに、どなり合ったりはせず、わりとたんたんと話すんですが、怖さがヒシヒシと・・・。
そして終幕では、ロシア人が最恐説・・・。いやー北方のマフィアは感情がなくて問答無用、戦争機械みたいな怖さがありますなー。
そしてアメリカのこの治安の悪さとギャングの迫力・・・こりゃ、日本は戦争負けるわ、ってなんか納得するw
最後はホラー映画でも見ているような気持になりました。
フェイク(1997年)
監督やキャスト
マイク・ニューウェル監督
アル・パチーノ、ジョニー・デップ出演
あらすじ
マフィアの一員として、六年間も潜伏操作したFBI捜査官。
コードネームはドニー・ブラスコ。実はこれも、本物の捜査官の手記に基づく実話べーすという・・・。こういうギャング映画系は実話を基にしているとけっこう傑作になっている可能性高いのかもしれない。
FBIから以前より目を付けられていたマフィアメンバーの、レフティー(アル・パチーノ)。彼に、宝石鑑定の手腕を見込まれて、弟分として取り立ててもらったドニー。(ジョニー・デップ)
着々と、組織の構成員などの情報を手にいれ、FBIに報告。
マフィアグループ内の抗争でも頭角をあらわし、上層部のソニーにも引き立ててもらえるようになり、レフティーよりも出世しそうになる。
一方、組織内でレフティーはいつまでも、うだつが上がらない・・。
二人は人として交流を深めていくのだが、しかしこれは潜入捜査。
いつか打ち切りの時と、裏切りが明らかになる瞬間が来る・・・。
みどころ
アル・パチーノといえば、圧倒的に「ゴッドファーザー」シリーズで知られていますね。もちろん同シリーズもおすすめなんですが、この「フェイク」では、哀愁が漂いまくる、いつまでも出世できない下っ端マフィアのおっさんを演じています。
自宅でテレビ見ながら見せる、上下ジャージ姿とか、本当に哀愁!
貫禄たっぷりな親分だけではなく、こういうパッとしないおじさんまで演じられるのがアル・パチーノの凄いところ!
そしてジョニー・デップも、短髪でレザー系のジャケットと、彼のキャリアの中では、かなり硬派な男度が高いファッションに身を包んでいるのも、見もの。
緊張感の半端ない、マフィア潜入捜査から、久しぶりにうちに帰ると、いきなり愛妻を階段で押し倒すという、こういうのもリアルというか、、「孤狼の血」でも、いっぱいいっぱいになった若き刑事(松坂桃李)と彼女のシーンでも似たようなものありました・・。
見つかりそうなハラハラ感も、目が話せないポイント。例えば、ブーツの中に捜査道具を仕込んであったんだけど、日本料理店に入ることになってしまった時とか。畳だから、靴を脱がないといけない、でもバレるから、脱ぐわけにはいかない!
結果、スタッフに因縁つけるということになるわけなんですが・・・。
これは男たちの間の愛と裏切りのドラマ、とでもいう哀愁漂うギャングものです。「仁義なき戦い」の哀愁が好きって人には、面白いかもしれない。
また、アル・パチーノとジョニー・デップの演技は、どちらも凄い出来になっています。
ノー・カントリー (2007年)
こちらは、コーエン兄弟監督作品。
バルデム演じるメキシコ人のヒットマンが、ともかく無表情でどんどん人をあの世送りにしていく。凄みのある存在です。
これと対峙するのが戦争帰りの、アウトロー系軍人。
アカデミー賞を四冠も受賞した名作です。
詳しい感想は上の記事に書いてます。
フィルムノワールまとめ
たまに見たくなってしまう、こういう危険な映画・・・。
人間の暗黒面にダイブ出来るのがいいんですよね。ダークサイドが我らを呼んでいる・・・。
意外なところでは、「スターウォーズ」のエピソード3も、フィルムノワール認定したくなるほどにダークです・・。
今回紹介できたのは、ほんの一握りなので、また随時追加していきます・・・。