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人生道草しまくり迷いまくりのstray dogが遂に故郷を見つけるまでの物語。

「羊と鋼の森」宮下奈都の感想。つまらない?面白い?ピアノ調律師の小説【2016年本屋大賞】

 本屋大賞受賞の作品ですが、最近文庫化されたので、手に取ってみました。

「羊と鋼の森」と、題名はなんだかミステリアス・・・。

ピアノ調律師の話みたいだけど、一体どんなストーリーが展開されるのか?

羊とは一体??というわけで、読んでみましたのでレビューします。

さてさて、面白いのか、つまらないのか??

タイトルからすると、どこかアドベンチャーみたいな話なのかな?と思っていたけれど、意外とホノボノしておりました。

 

結論を先にいうと、そこそこ面白いのですが、途中で少し眠くなりました。

登場人物の心理の掘り下げは足りなかったかなあ?

とにかく静かな物語です。

 

 

「羊と鋼の森」登場人物

  • 外村

主人公の青年。二十歳そこそこ。

北海道の山奥で育つ。高校の時に、偶然、学校の体育館にピアノを調律にきた板鳥を案内し、板鳥が調律したピアノが、森のような奥深い音色を奏でるようになったのに感動して、調律師を目指すことにした。

 二年間、本州の専門学校に通ってから、また故郷に戻って、小さなピアノショップで調律師になった。

 同僚には板鳥もいる。

 

心の中で考えているつもりのことを、無意識に口に出して言ってしまう癖がある。

 

  • 板鳥

 たぶん40代後半~50代くらいの調律師。

海外の有名ピアニストにもその腕を見込まれるほどの才能の持ち主。

だが飛行機に乗るのが苦手なこともあって、小さな町で働いている。

いつも紳士的な喋り方をする。

 

二十代後半くらいの先輩。バンドをやっていて、気さくな性格。もうすぐ彼女と結婚する。

 

  • 秋野

 ぶっきらぼうで皮肉屋の先輩調律師。外村には、しょっちゅうチクチクと嫌味をいってくる。

若い頃はピアニスト志望で、音大の大学院まで行っていたが、諦めたという過去を持つ。諦めるには四年間かかったという。

 

  • 和音と由仁

 双子の女子高生。

ピアノがとても上手い。

和音は物静かで、ピアノも静謐な中に強さがある音。

由仁は陽気な性格。ピアノも、華やかでカラフル、軽快な音色を奏でる。

由仁は、ピアノが弾けなくなってしまい、和音はピアニストを目指す。

 

「羊と鋼の森」あらすじ

tuning 2

△ピアノの中ってこんな風になってるんですね!たしかに「森」です。

 

 外村は、北海道の山奥育ちの純朴な青年。

偶然出会った板鳥に魅せられて調律の世界へ飛び込んだ。

 

でも、自分自身はピアノを弾くこともできないし、クラシック音楽にも、まだまだ詳しいわけではない。

 

地元の小さな楽器店で、調律師として就職できたものの、まだまだ見習いである。

 

先輩の柳に連れていってもらったお客さんの家で、和音と由仁のピアノを聞いて感動する。

 そんな折、急に一つの鍵盤の音色がずれてしまったからと由仁に呼び出され、まだ入社して半年くらいだけれども、緊急だったので出向く。

 ところが、そこでかえって、音階を狂わせてしまったのだった。

落ち込む外村。

 

けれど少しずつ仕事を覚え、二年くらいして一人でお客さんの家を回れるようになっていた。

 

 そんな折、例の双子の女子高生の家から、調律アポをキャンセルしたいと連絡があった。なんと、双子のどちらかがピアノを弾けなくなってしまったので、しばらく調律はいいということだった。

 心配する外村や、先輩柳・・・。

 

 ピアノを弾けなくなってしまっていたのは、予想に反して由仁の方だった。

ピアノを弾こうとすると、指が動かなくなってしまうのだという。

 

 外村自身も、お客さんからキャンセルされることが多いので、それは何故なんだろうかと、気にしている。

 

 バンドマンの柳、天才肌の板鳥、皮肉屋の秋野・・・と個性的な綿々の群像劇的な部分もありつつ、ふわりと優しく、凛と成長していく主人公の物語である。

 

「羊と鋼の森」を読んだ感想

「羊と鋼の森」というタイトルの意味とは?

Sheep

 さて、何やらミステリアスなタイトルだが、実のところ、「羊と鋼の森」というのは、ピアノを指していた!

 

 なぜか。

 ピアノの鍵盤は、ピアノの本体部分(というか蓋の下)の中で、ハンマーと繋がっている。

 このハンマーが弦を叩くことで、音が出る。

(ピアノは打楽器と言われるゆえんですね)

 

そして、このハンマーは、羊毛で出来ていたのでした。

ウールを固めたものなのだった。

 

そして弦は、鋼でできている。

それに、ピアノには木も使われている。

主人公は、板鳥が調律した時の音色を聞いて、故郷の大雪山の森を思い出すのだった。

 

というわけで、「羊と鋼(はがね)の森」。でした。

 

しかし考えてみれば、このピアノという、どでかくて複雑な楽器を最初に発明した人は凄いなあ・・・。

 

「森」の例えが、全篇に染みわたっている

The Two Towers

 

 物語自体は、淡々としていて、調律師の日常が語られていくので、実際の森は登場しない。

 でも主人公は、よくピアノの音色の中に、故郷の森の様子を思い出す。記憶の中の森に、ピアノの音色に導かれて入り込んでいくような描写がある。

 その感覚が、魅惑的だった。

 

 「世界とか、音楽とか、兄貴が扱う相手はいつも大きい」と、主人公は、祖母のお葬式のときに、弟に言われる。

 主人公は「ピアノの音は世界と繋がっている」と、調律師を目指すことを決意した時、家族に話していたらしい。(自分では覚えていない)

 

 これには理由があって、

ピアノは、どんなラジオも、電波を受信できるように、世界中のどんなメロディーも、ピアノがあれば奏でることもできる。

そういう意味で、世界につながっている装置なんだと、主人公は考えていた。

 

 こんな感じで、描かれているのは日常なのだけれど、それがもっと大きな世界や森へとつながっていく気配が作品に漂っていて、それが作品世界を深くしているかも。

 

ピアノを弾く人々、それぞれの物語がある

Piano Forest_capt3


 職業柄、外村青年は、色んなお宅に伺って、ピアノを人生の一部とした人々のストーリーを垣間見ることになる。

 双子の和音と由仁の他にも、色々困った人も・・・。

上下スウェットで、ボサボサ髪の引きこもりみたいな青年、バーでピアノを弾いている、頑固なおじさん、昔娘が弾いていたピアノを弾こうとしている老女・・・。

 双子以外の人々のエピソードは、それほど掘り下げられることはないのだが、ピアノを巡って世界が広がっていく感触がある。

 

夢がある人が読みたい言葉もある

The pianist's pencil


 板鳥に憧れた外村青年が、もがきながら次第に成長していく物語になっている。

ピアノを弾けないし、裕福な音楽一家に育ったわけでもない、普通の青年。

彼が、少しずつ前に進んでいく様子を描いている。

 

この主人公は、なんというかとても自然体。

素直。歪んでいない。

そして、努力も、特に努力と思わずにしている感じがする。

 

毎日、お店のピアノを調律し直したり、家ではピアノ楽曲を聴きこんだりなど、こつこつと、できることを少しずつ、たゆみなくやっている。

でも、特別に歯を食いしばって「がんばるぞ!」という感じでやっているわけでもない。

 もちろん、自分の腕がなかなか上がらないことを「気にしたり」はしているのだが、必要以上にクヨクヨしたりしない。

 こういう姿勢って、何か目標を達成するうえで、けっこう大切なのかもしれないなあと思った。

 

どんなことでも一万時間かければ形になるらしいから。悩むなら、一万時間かけてから悩めばいいの

「才能ってのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似てる何か。俺はそう思うことにしてるよ」

 

・・・などなど。

夢がある時に、読みたい色々なフレーズが、色んな登場人物の口から語られます。

 

原民喜の言葉は音楽にぴったり。

 天才肌の板鳥が、自分の調律の心得としているのが、作家、原民喜が、文章について書いた言葉だった。

いわく、

 

明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体

というもの。

 

 これ、文章というよりは、どんな表現に一番当てはまりそうかと考えると、やっぱり音楽かなあ、という感じがしてしまう。

 音楽のために書かれたものではないのが不思議なくらいである。

 

「羊と鋼の森」面白かった?

pianist

 「羊と鋼の森」は、ぶっちゃけいって、とても静かで淡々とした小説でした。思ったよりも。人によっては途中で眠るかもしれない・・・。

 

 やはり題名の付け方が上手かったなあ、と思います

 題名が「調律師日誌」とかだったら、本屋大賞ノミネートとか、もしかしたらなかったかも??

 

 いや、内容自体は、悪くないです。

作家ご自身もピアノを弾かれるようですし、調律師の方にみっちり取材したのでしょう、ともかく調律の世界の奥深さがよく分かって面白いです。

 ある意味、「情熱大陸」見てるような感じのところもありますね。

 

とあるプロフェッショナルの世界の奥深さを見せてもらえるという。

あと、森のイメージとピアノが重なるところも素敵です。

 

ただ後半、ちょっと退屈してきてしまったのは事実。

つまらなくはないです。

最後まで読み進むことはできます。それほど、分厚い本ではないですしね。

 

なんですけど、それ以上に新鮮な驚きに目を覚ます!とかそういったことはあまりなかったです。

 

どんな人におススメか考えると・・・。

ちょっと前に「ビブリオ古書店の事件簿」って小説はベストセラーになりましたが、

ああいう形のオムニバス小説が好きな人にはいいかも。

 

あと、ピアノをやっている人は、かなり共感して楽しむことが出来ると思います。

羊と鋼の森

羊と鋼の森

  • 作者:宮下 奈都
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日: 2018年02月09日

 

ただ題名から、何か血湧き肉躍る冒険を想像して読むと、期待外れになってしまうと思いますよー。

エピソード自体に、何かそこまでドラマチックなものがあるわけではありません。

 森の空気とピアノの音色が醸し出す雰囲気と、静かな強さで夢を追う人々の気配が素敵という、そういう物語です。

  もちろん、とても上手く書かれてはいますよ・・念のため。

登場人物の内面のドラマについては、あまり突っ込んで書かれていませんが。

 

 映画化もされるようですが、映画には向いていそう。

 

ピアノを調律する美少年の姿が見たい!!(そこか(;^_^A)

 

美少年と、森と、ピアノ楽曲なんて、素敵な組み合わせではありませんか!!

 

 しかし、主人公が双子の一人、物静かな和音に淡い恋心のようなものを抱いているのもほのめかされているので、この辺りは映画化される時に、どう脚色されるのか、されないのか、というのは気になる点です♪

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