小説「オリジン」のあらすじ
宗教美術学者のラングドンは、かつての教え子で天才エンジニア、未来学者かーしゅから、講演に招待される。
そこでカーシュは、科学と宗教をくつがえすような大発表をするという。
会場であるグッゲンハイム美術館の、建築やアートを鑑賞した後でカーシュと再会したラングドン。
しかしその後のイベントでカーシュは、何者かの凶弾に倒れた。
発表の直前のことだった。
発砲したのは元スペイン軍人。将校だったが、教会の爆破テロで妻子を失い、酒浸りになってクビにされていた人物だった。
何者かに大金を振り込まれ、神のための使命を果たして欲しいといわれた。
しかも、それが復讐にもなるという。
敬虔なクリスチャンで、テロリストへの復讐もはたしたかったアビラは、任務を引き受ける。しかし誰に頼まれた??
カーシュは、講演前に、三人の聖職者にあらかじめ内容を教えており、三人は公表に反対していた。あまりに宗教や信仰へのダメージが大きいというのだ。
しかしカーシュは、不意打ちで公開しようとしていた・・が。その矢先にころされた。
さらにカーシュだけではない、三人の聖職者のうち、二人も、次々と暗殺されてしまう。
目的は??
カーシュから知らされた秘密を洩らさないための口封じか?
そして残る一人の聖職者、スペインのバルデスピーノ司教が、なんだか怪しい。
ラングドンは、カーシュの友人で美術館長のアンブラと共に、カーシュが発表していた内容を、公表することを目指す、
相棒は、カーシュが作成していた素晴らしい人工知能のウィンストンだ。
バルデスピーノの他は、アンブラの婚約者であるフリアン王子も怪しい。
フリアンは、イベントの出席者名簿に、暗殺者アビラを忍び込ませた可能性があった。
王宮から何者かが、アンブラに、アビラを入れるよう頼んでいたのだ。
カーシュの発表内容のパスワードさえわかれば、スマートフォンから遠隔のコンピュータを操作して、世界に発表することができる。
パスワードは、詩の一節だということだけ分かっている。
ラングドンとアンブラはまず、カーシュの住んでいた住居に向かう。本棚をチェックするためだ。
ガウディの建築したアパートメントの最上階だった。
しかし本棚には該当しそうな本は見当たらなかった。
陰謀論サイトでは、スペイン王宮が殺害の黒幕だったのではないかとの話題で持ち切りになる。
王宮は、次期王妃アンブラが逃げてしまったことを知られることを知らせるわけにもいかず、ラングドンがアンブラを誘拐したとマスコミに発表していた。
そのせいで、ラングドンは犯人として追われるはめに・・。
二人は、サクラダファミリアに、カーシュが預けている、ウイリアムブレイクの本があると知り、パスワードはそこから取られていると考え、サクラダファミリアに向かう。
まさに、そこに文字数を満たす文句が書いてあった。
しかし、暗殺者も二人を追いかけてきているのだった。
暗殺者はすみやかに、アンブラの警護についていたスペインのガードを二人殺害してしまう。
それからラングドンにも魔の手が迫る・・・。
が、ラングドンはなんとか難を切り抜け、アビラは教会のらせん階段から落下して息絶える。
しかし黒幕はいまだに謎。
二人は、人工知能ウィンストンが設置してある建物を見つけ、侵入する。
そしてパスワードを打ち込むと、カーシュの発表が再生されるのだった・・・。
やがて終幕で分かる黒幕の正体は意外なものだった・・・。
「オリジン」感想
本当に、息もつかせぬサスペンスだった。
「次の瞬間、もっとも意外なことが起こるのだった!」みたいな、引っ張り文句で終わる章がおおくて、好奇心から次々と先へすすんでしまう。
あと、ガウディや現代美術の描写や解釈が見事で、小説といっしょに美術鑑賞もしたかのような贅沢な味わい。
そして、カーシュの「世紀の発見」の中身は、そこまで新鮮ではない気もしたし、そんなことで宗教がダメージを受けたりしないのでは??というものではあった。
色々なところで見聞きするような内容に近い。
でも、科学と信仰の葛藤と融合という、ブラウン独特のてーま、実に熱い語り口で語られる。独特の熱狂感があるので、夢中にさせられる。
テスラやウーバー、陰謀論サイトなど、最新のテクノロジーが登場するのも面白かった。