水谷豊と反町隆史主演、「相棒」劇場版第四弾!いや~~いい映画見た!!
謎解きと緊迫感と歴史とヒューマンドラマのバランスが丁度いいし、何度も胸を衝かれるような台詞に出くわした。
ここのところ、なぜか日本の戦時中を扱った映画が多い。ジブリの「風立ちぬ」から始まって、永遠のゼロやら、異色では大林信彦の「この空の花」や、微妙に戦争を引きずっているといえばシン・ゴジラなんかも、この系統に入ってくるだろう。
「この世界の片隅で」ももちろんそうだ。
こういう映画には二種類あって、一つは「日本」という国家に同一化するもの、もう一つは「国家」からはみ出してしまったもの、むしろ国から裏切られた者たちの悲惨さを描いたものだ。
で、「相棒4」がどちらの視点から描いているかといえば徹底的に「国に裏切られた者たち」の視点から描いている。まずそこが素晴らしいと思った。
「相棒4」のあらすじ
警視庁特命係の杉下右京と冠城亘は、国際犯罪情報事務局の元理事で、まだ国際犯罪組織「バーズ」を追いかけ続けているマーク・リュウの警護を任される。
だがそのとき、大事件が発生。
外務省のホームページがハッキングされ、「バーズ」がテロ予告映像を流したのである。そこにうつっていたのは、七年前に英国で起きた大使館の毒殺事件に巻き込まれ、誘拐されていた当時の英国大使の娘だった。
そして、身代金を払わなければ「大勢の人々の目の前で、日本人の誇りが粉々になる」と予告される。
さらに、右京とリュウが食事をしている最中、ビルにいた人々がバタバタと倒れたり、タイで起きたテロ事件で命を落とした遺体が、日本に到着し、搬送中に行方不明になるなど、不可解な事件が次々に起きる。
犯人が持っていた戦時中の写真から、右京は、国際スポーツ大会(たぶんオリンピックだろうが商標の関係で書けないのかも)から帰ってきた選手団が凱旋パレードとの類似jを発見し、そのパレードが狙われる!と直感する。
急きょ、警備が増強される中、パレードは詰めかけた人々で満杯である。どうなってしまうのか・・・。
「相棒4」上映時間や公開日
- 上映時間・・・120分
- 公開日・・・2017年2月11日
- 配給会社・・・東映
- ジャンル・・・刑事もの、探偵推理、アクション、
「相棒Ⅳ」を見た感想
どの役者にも見せ場がたっぷり!
水谷豊演じる右京には、今回命の危険もあるし、北村一輝の野性的な恰好良さは、ライフルを構えたりバイクに乗ったり、その他何気ないシーンでも発揮されている、
誘拐されたはずの少女(山口まゆ)も、清純はな雰囲気とは違って、ホットパンツ(太ももピチピチ~~)に黒髪でピストルを構える。それに及川光博や仲間由紀恵も出演。
役者の魅力にはことかかない。
どんでん返しと意外性がたっぷり!
やはり、刑事ものらしく名探偵張りの、右京さんの名推理が今回も最後まで冴えわたっている。
驚きの連続だった。特に、何気に一番ビックリ(゚д゚)!したのは、なんと「相棒4」劇場版のチラシにも秘密が隠されていたこと!!これは重大なネタバレなので秘密にしておきますが、映画のキャッチコピー、「あなたは生きるべきです」というこの言葉は、映画の終結部でも、水谷豊演じる右京の口からそっくりそのまま出てきます。
それでもって、チラシで水谷豊と反町が手を差し伸べています。これはまあたぶん、「50万人が人質」っていうことだから、その人質の誰かに、そしてまた、映画を見ている一般人のわれわれ一人ひとりにってことかなあ、と思っていた。
それはそれで、そういう意味もあったかもしれない。
でも水谷の口からこの台詞が出たとき、「ああー、そういう設定だったのね!!」と閃きのような驚きが待ってます。
チラシにまで、仕掛けを用意していたとはなあ・・・。
そして、冒頭から犯人の姿は明らかになっていて、「烏 レイブン」の入れ墨を持った男として、ずーっと映像にも移りっぱなしなのに、ともかく謎がずっと付きまとう。
まず、七年前に誘拐されてから人質にされている少女。このおとなしく無垢そうな少女は、いまやこのテロ集団の一員として、一人前にピストルまで扱えるほどになっている。力なき被害者、というイメージとはかけ離れていて、変装して活発に動き回るし、刑事の目もすり抜ける。
なんでこんな行動をしているのか?というのもまず謎である。
キーワードは「国に裏切られた」ということだ。七年前、人質に身代金を要求するレイブンらの要求を、政府は握りつぶした。父親である外交官も事件で命を落としていて、もう身寄りもいない少女だったので見捨てるのは簡単だったのだ。
そして犯罪組織のボス、レイブンも国に裏切られた過去を持っていたのだ。
日本社会と歴史に対する痛烈な批判
とにかく一貫して、社会に対する強烈な批判がなされていて、本当によくぞ言ってれた!と喝采したくなる場面が沢山あった。
それから、知らなかった歴史についても教えてくれた。
戦時中の南洋開拓団と、1950年代に出された特別措置法だ。
今まで屯田兵にはじまって近代日本は過酷な環境を開拓するため、人々を利用してきたが、南洋開拓団もある意味ではそうしたものの一つ。ジャングルを一から開墾し、やっと人が住めるものになると、また人の手にその土地が渡されてしまったという。
映画の中で描かれていたのは戦争の終わりごろ、敵軍が攻めてきたときも、一般人よりも軍隊が優先して救命ボートにのり、命を失った民間がたくさんいたということ。
そして、一定年数行方不明だった人間は、戦死者として扱うという特別措置法と法律の存在である。
国のためだと思って一生懸命過酷な土地を耕し続けてきた人々を、日本は簡単に見捨てた。そういう、裏切られた人々の存在である。
象徴的だったのが映画の中で大臣や総理が、「テロとの闘いのため断固テロリストの
欲求には屈しない」と言いながらも、自分たちの保身だけは考えていることだ。そのことについて追及されると「わたしたちは国のいわば”頭脳”だよ。それならば、
手や足(一般国民)が多少擦り傷を負ったって仕方ないじゃないか」と主張する。
こうした考えは公然と発言はされないけれど、暗黙のうちに政治家や官僚のうちに跋扈している考え方だろうと思う。
だから、原発事故が起きたって、彼らは遠くで指令していればよくて、現場で莫大な放射能に身をさらして決死で作業している原発作業員のことなどまったく考えていないのだ。東電の幹部だってそうだ。まっさきに原発の収束作業にあたるべきひとびとが、そういう汚い危険な仕事は他人に押し付けて、ゆうゆうと何千万もの役員報酬をもらっている。まったく、責任感のない、「自分さえよければ」体制である
こういう体質が「どうせ事故が起こったって、自分に責任がふりかかってこなきゃいい、自分と自分の家族さえ安全に暮らせればいい」という考えのもと、ずさんな管理体制を許してきたのだと思う・・・。
あ、話がずれてしまった!!
が、国は、
といって語弊があれば、国の中心部にいる政治家や官僚は、国民を裏切る。これは残念だけど自明の真理だ。「手足はどうなったっていい、単なるコマに過ぎない」というのが一般的認識だろう。
こう考えると守るべき日本というのは結局どんどん切り詰められて「権力者や官僚」さえ残ればいい、ってことになる。
現に戦時中は「国体=天皇」を守るためなら、国民は最後の一人まで犠牲になっていい、と子供たちは教えられていたんだから・・・。
「守るべき日本って何よ?誰のこと?」と大きな疑問が浮かぶ。
でもそれをばらさないために、賢い彼らは、「日本人」という愛国心というオブラートでそれを包む。「日本のために犠牲になってくれ」と。「ぼくちゃんたちのために犠牲になってね」とはいわない。
それで、戦時中も人々は身を粉にして日本のために尽くした。そしてその結果裏切られた人が多数いたというわけだ。
刺さった台詞といえば
「この国は平和を享受し、ほかの国で起こっている悲惨なことには、目を向けようとしなかった」
「少女を見殺しにして、それでものうのうと出世していくやつよりは、、、」
などなど色々あった。
「相棒4」も、もう一つの戦争映画であったのだと思う。
そして、この映画が作られたのも、国に裏切られた人の記憶というのが、まだ受け継がれてきているからだと思う。その記憶が今、警鐘を鳴らしているのではないだろうか。
勇ましいだけじゃない戦争の裏面。悲惨で卑怯で、欲望にまみれていて・・・かっこいいとは間違ってもいえないような側面を、しっかり直視する必要があるのではないか。
特に最近は貧富の差が広がって、社会がぎすぎすしてて「自分さえよければいい」空気が広まってきているのが怖い。
まとめ
なんか思わず自分の意見の分量が今回は大きくなってしまった気もするが・・汗
政治や社会に対する意見がどうであれ、たぶん色々考えさせられるし、リアルな歴史とも繋がっている傑作だと思う。
太田愛の脚本はすごい良かった。社会派なのは大事だが、ただ考えさせるだけでは映画としては面白くない。だがこの「相棒4」はエンタメとしても最高に面白いし、推理ものの側面もあるから脳みそも刺激される。
ともあれ必見である。