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円城塔「道化師の蝶」を読んだ感想とあらすじ。迷宮か!?実験しまくり小説【ネタバレ】2011年下半期芥川賞

Circo da Madalena

2011年下半期芥川賞受賞作。田中慎弥と同時受賞。

記者会見では田中氏の強烈キャラクターのかげに隠れて、目立たなかったですね。普通の爽やかでおとなしそうな、お兄さんという印象でした。

「道化師の蝶」読んでみましたら、よくこれが芥川賞獲れたなあ・・・というような、実験的作風でびっくりしました。やや難解で、気を抜いて読んでると、頭に入ってこなくなる時があります。

 

円城塔さんプロフィール

円城さんのプロフィールも、イマドキの時代を映し出しています。

東北大学出身で、その後東京大学の博士課程を修了。立派な肩書きです。数十年前だったらエリートと呼んでもよかったかもしれません。

でも今は院生が余りまくり。高学歴ワーキングプアの時代です。

そんなわけで、円城さんも、なかなか常勤のポストが見つからず、数年契約の非正規研究員として、様々な機関を渡り歩いていたようです。

その時「このままじゃヤバイ!」と思って始めたのが小説執筆・・・・w

リスキー過ぎるだろ!!と思っちゃいますが・・・。

朝と夜に2時間ずつを執筆に当てて頑張っていたみたいです。

 

以下、ネタバレあり。

 

円城塔「道化師の蝶」あらすじ

飛行機の中でわたしは、隣の席に座った、巨体の実業家エイブラムス氏に、小さな銀色の捕虫網を見せられる。それは幻の蝶やら、アイデアやらを捕まえられるのだ。

エイブラムス氏は常に飛行機の中で生活し、アイデアを捕らえては新事業を起こして生活しているらしい。

その中で「旅の間でしか読めない本」「飛行機の中で読むに限る本」があるといいなあという話になる。

飛行機の中って、人によっては落ち着いて本を読めない。

だから、飛行機っていう特殊状況下でいちばん頭にすっと入ってくるような本があったら、売れるだろう、という話。

そこから話はいろいろトリップして、ずっと旅をしながら、現地で耳にした人々の会話を忠実に書き記すという方法で小説を書く、伝説的な作家「友幸友幸」が語り手へと移っていく。

最後にまた話は機中に戻るが、この物語にはあらすじというあらすじは、あまりなくて、「とあるシチュエーションでだけ読める本」というアイデアを巡る空想的考察みたいなものに仕上がっている。

「眠る前に最適な本」??

芥川賞選考委員黒井千次氏は、この円城作品について、「2回読んだが2回とも途中で寝た」と発言していた。

分かります・・・。わたしも、何回か寝オチしました・・・。

まあ寝転がって読んでいたせいもあるのですが、たぶん、眠りこける前に、頭の中に広がってくる、変な妄想めいた思考に、妙に「道化師の蝶」が似ているからだと思います。

そう、高学歴ワーキングプアの人間が、「うーん生活どうにかしなきゃ、小説でお金稼ぐとしたら・・・どうしたらいいのか」と、眠る直前まで布団の中で考えをめぐらし、「そうだ!シチュエーションだ!○○の時に役立つ本を書けば売れる!例えば・・・「飛行機の中で読むに限る本」「猫の下で読むに限る本」・・・そんなのが書棚にあったら、みんな手に取るぞーー」

とか妄想していて、そのまま寝オチして見た夢が本作・・・とまあ、そんな感じなんです。

なので切羽詰った生活と、眠れるだけの呑気さ、「猫の下で読む本」とか考え付いちゃう、生まれつきのおとぼけ感覚・・・そんなものから生まれた物語ではないかと思いました。

物語という形式を取った思考実験

やはり研究者なだけあって、理屈っぽい。感情よりも、まずアイデアありきで、そのアイデアを物語を使ってシミュレートしている感じです。

この本で核になるアイデアは「旅の間でしか、読めないor書けない文章があるとしたら、それはどんなものか?」というコンセプト。

そういう意味では、概念や科学的知識が重要な役割を果たすSF小説の分野に分類されると思います。

実際、SF作品もたくさん書いてらっしゃいますし・・・。

SFや奇妙な物語が好きな方にはおすすめ。

それから、ボルヘスやカルヴィーノなんかの迷宮的世界の雰囲気とも似ているかと思います。

まとめ

で、やっぱり安眠には良さそう(笑)

つまんな過ぎるとかいうわけでなくて、とぼけた淡々とした語り口が、なんか安心感を誘うからかもしれません・・・。

 

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