バシリスク
バシリスク(basilisk)とは、頭に王冠のようなトサカを持った蛇に似た幻獣です。
コカトリスという幻獣も、このバシリスク伝説から分かれて生み出されたようで、両者はしばしば混同されてます。 概して、バシリスクの方が蛇に近く、コカトリスはより雄鶏に似ているみたいです。
蛇やカエルの卵を、雄鶏が温めて孵すと、バシリスクに 雄鶏の卵(有り得ないですが・・)を、蛇やカエルが温めると、コカトリスになるとか。
ちょうど反対なわけですね。
西暦79年後ごろに書かれたピレネの博物誌によれば、
「指12本くらいの長さで(数える単位が面白いな) 頭には、王冠によく似た白い斑点があり、 バシリスクがシューっと音を立てて威嚇すると、他の蛇は一目散に逃げ出す。 ふつうの蛇は体をくねらせて前進するが、バシリスクは、胴体の真ん中あたりから持ち上げ、直立して進む! 低木を打ち倒し、草を燃やし、石をも砕いて進んでいく。 特に毒が強力で、馬に乗った人間が、槍でバシリスクをつき刺せば、毒は槍をも上がってやってきて 人間ばかりか馬もキューバタン・・だと一般的に信じられていた。」
と書かれているとか。 強力な眼光を持ち、睨み付けられた者もやはり、バタンキューです。 一睨みと、猛毒の息が武器というわけです。
バシリスクの弱点
コカトリスと同じく、イタチに弱いのです。イタチの臭いにやられてしまうようです。 また、雄鶏の鳴き声、鏡(自分の姿を見ること)にも弱いとされています。
Wolframs-Eschenbach. Cemetery church St.Sebastian. Allegory of the strength of faith ( 1741 ) by Johann Michael Zinck of Neresheim. The latin inscription is: "Ne terreamini ab his" ( Don´t let you be terrified by these )[/caption]
かのレオナルド・ダヴィンチも「動物誌」の中でバシリスクに言及していて、 イタチの尿の臭いに弱いと書いていました。
でもイタチ自身も、自分の尿の臭いにやられて、ひっくり返ってしまうとも。 「イタチの最後っ屁」って、日本でもいいますよね!東西どちらでも、やたらと臭い生き物と認識されているようで・・・。本当にそんなに臭いのかな。
バシリスクが卵から孵る瞬間
カンタベリー神話によると、バシリスクは、晴れ渡った満月の晩に、年老いた雄鶏が産卵した卵に宿ります。 その卵の殻は、普通と違い、柔らかくて皮のような触感をしているのですが、数日中に孵ります。
バシリスクは、生まれた時から成体と変わらない嘴、足を持っていて羽根も完全に生え揃っています。
目には強烈な炎が宿っていて、この一睨みでどんな生き物もコロリ。。です。 ・・・イタチ以外は。 また、雄鶏の「コケコッコー」の鳴き声にも弱いので、バシリスクが生息しているといわれた地帯を通る際、旅人は雄鶏を抱えて旅したそうですよ。
コカトリス
コカトリスとは、フランスやイギリスを中心に生息する幻獣。 英語で Cockatrice, フランス語で Cocatrix ドラゴンの翼と、蜥蜴のような胴体、雄鶏の頭を持っています。
特徴
コカトリスは、「オス」のにわとりが産んだ卵を、蟇蛙(ひきがえる)が 温めて孵化させると、誕生すると言われています!
(蟇蛙でなく、蛇が温めるというバージョンも有り) しばしばコカトリスは、バシリスクという伝説の生物とも同一視されますが、 バシリスクは大抵羽根のない姿で描かれるんです。
コカトリスはより鶏に似ていて、バシリスクはどっちかというと鰐(ワニ)っぽいです。 しかし、実際資料を見ていると、「バシリスク」という名前が多く使われています。
「バシリスク」の方が古くて、「コカトリス」はそこから派生したみたいですね。 ▽お酒のラベルにもなっている。 [embed]https://flic.kr/p/irqNZx[/embed] Cockaonce, cockatwice, cockatrice. #Guinness #StiffDrinkWednesday / waiferx
コカトリスの誕生を防ぐ方法
コカトリスは雄鶏の卵から生まれますが、この場合、別途黄身のない卵を用意して、それを家の上空に放り投げ、家屋にぶつけることなく、向こう側に着地させられれば、コカトリスが生まれるのを防ぐことが出来るといいます。
しかし、「黄身のない卵・・・」って??
眼力が凄い
コカトリスは強力な眼力を持っていて、睨み付けるだけで、人間その他に大ダメージを与えます! 唯一、このまなざしに対して、びくともしないのはイタチ君だとか。
コカトリスは背中にドラゴンのような翼が生えていて、これで飛ぶことも出来るそうです。
イギリスのワーウェル村
イギリス、ハンプシャー近くのワーウェル村にはコカトリス伝説が残されていて、この怪物を誰も倒せず、村人が困っていたところ、 グリーンという名前の男が、コカトリスの潜むダンジョンに鏡を持ち込んで入りました。
怪物は、鏡に映る自分の姿と戦い続けて、力尽きてしまったそうです。
アンドーバー美術館に移されるまで、ワーウェル村の聖ピーター教会をコカトリスの彫刻が飾っていました。
・・・それにしても、コカトリスのフランス語名、「コカドリーユ」って 「コケコッコー!」という雄鶏の鳴き声にそっくりだと思いませんか?
ユニコーン
ユニコーンとは、額から一本の長くて鋭い、螺旋状の模様が刻まれた角をはやした伝説の動物です。その特技や、モデルとなった生物に迫ります! とても由緒のある神話的生物で、古代ギリシャ、インダス文明、それに聖書にも記述があるのです! (本当にいたんじゃないか、なんて思ってしまいますね・・・事実、エラスモテリウムという巨大な一角を持った古代生物が、人類と同じ時代まで生息していたことが最近分かりました!後述します)
特徴
ヨーロッパの中世では、割れたひずめと、時に山羊のようなあご髭をたくわえた、奥深い森に住む生物だとされていました。
なぜか処女に寄ってくるらしく、乙女しか捕まえることのできない、純粋さと優雅さの象徴として描かれていました。 ユニコーンが聖マリア様の姿を見るなり、そのお膝に頭をのっけて、すやすや心やすらかにふかーく眠ってしまったというのは有名なエピソードです。 色んな絵画や彫刻なんかの題材にもなってますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチも、ユニコーンは処女を見ると、日ごろの獰猛さも忘れてしまい、ぽうっとなってその膝で眠り出す。それで、狩人はそこを捕まえるわけだ、と、ユニコーン狩りの方法について言及しています!
また当時の百科事典によれば、ユニコーンの角は病を治癒し、汚染された水を、飲めるように浄化する力があるとか!
デンマークの王様の玉座は、ユニコーンの角で作られたといわれていました。(たぶんイッカクという海の生物のものです実際は・・・?)
また、儀礼用のカップも、ユニコーンの角(とされるもの)から作られました。 毒消しの効果が期待されていたわけです。
当時は、イッカクという海の動物 (ながーーい一本の角を持った、とても美しい小型の鯨)の角が、一角獣の角だといわれて交易されていたそうです。
六世紀のアレクサンドリアの商人、コスマスの博物誌によれば、 ユニコーンを生け捕りにするのは、ほとんど不可能とか。
なぜかといえば、この生物は追いかけられると断崖絶壁から飛び降り、空中で回転して、角で墜落のショックをぜんぶ受けとめて、平気でいるからだとか。 すげえ。そんな特技もあったのか、ユニコーン・・。
ユニコーンの由来は一体どこにある?
ユニコーンの伝説がどんな生き物から誕生したのか、諸説色々あります。
エラスモテリウム
ユーラシア大陸に生息していた、巨大なサイの仲間。エラスモテリウム。 体中が毛に覆われていて、体長五メートル、高さ二メートル、一本の大きな角を額から生やしていました。 氷河期のほかの巨大生物と一緒に、約35万年前に絶滅した・・・といわれていたのですが、最近、本当は2万9000年前までカザフスタンで生息していたという研究報告がされているのです。 とすると、古代人類と共存していた可能性もあり、 これを、わたしたちの遠い祖先が目撃していたのかもしれません。
あのマルコ・ポーロも、インドで犀をはじめてみて、ユニコーンだと勘違い(?)し、泥まみれだし、ぶーぶー唸るし、かっこわるいし、全然伝説の優雅な姿とは違うよ、諸君!!って報告をしているくらいなので、 ユニコーン=古代の犀説もありえますね・・・。
イッカク
イッカクは北極圏に住む小型の鯨で、中世にはこの角が、魔法の力を持つユニコーンの角だと偽って、売買されていたのです。
バイキング(海賊)達も、これでいい商売ができたようです。 エリザベス一世も、この「ユニコーンの角」と称されるものを、宝箱の中にとってありました。
二本角の鹿
オリックスやエランドといった、二本角の鹿たちも、(ガゼルに似た種類です) ユニコーンの起源では?と目されています。 というのは、彼らは二本角ですが、横から見たら、重なって一本の長い角に見えるから、というわけ。 横から見たイラストが伝わり、一角であると広まったという説なのです。
おわりに
それにしても、ユニコーンの角ってけっこう長めに描かれているイラストもけっこうありました。確かに、イッカクのながーい角がモデルになってて、あのまま生えてると仮定したら、そうなりますね。 でもそれで獰猛だと、かなり怖い生き物ですね~~。 夜道には乙女を用意!して守ってもらわなきゃ。