「君と100回目の恋」、もしも時間を巻き戻して、何度でもやり直せたら・・という誰にでも切実な思い。しかも、もし取り返しのつかない命がかかっているとしたら??という設定のラブストーリー。正直、物足りない部分もいろいろあったのだが、ともかく不覚にも泣かされてしまった・・・。それも三回くらい、涙が頬をつたうほど。ぐぬぬーーー。
てなわけでレビューします。
「君と100回目の恋」のあらすじ
どこにでもいる大学生の葵海と、長谷川陸は、幼なじみ。大学でもバンドサークルの仲間で、葵海はボーカル、陸はギターである。いつも何でも完璧にこなす陸。ちょっとツンツンして取り付きにくいけれど、いつのまにか葵海は陸に思いを寄せるようになっていた。
一方、同じバンドのベースの直哉は葵海のことが好き。直哉はある日ついに葵海に告白する。葵海は友達の里奈に相談する。
「(陸はこっち向いてくれそうにもないし、)直哉でいいから付き合っちゃおうかなあ~~」
しかし、里奈はこのふとした一言に怒ってしまう。「直哉は真剣に葵海のこと思ってたんだよ」と。実は里奈は、直哉が好きだったのだ。
・・・とまあ、典型的なすれ違いの三角関係ラブストーリーである・・・。
しかし、この一件のことで意気消沈していた葵海は、バンドのライブ本番後、ふらふらと悩みながら道を歩いている時、ポケットから転がり出た手紙を拾おうとして、道路に飛び出し、やってきた大型トラックに・・・・
轢かれる直前、目覚めると、そこはいつもの教室だった。しかも、すでに一回聞いたはずの授業をやっていたのだ。その後、バンドのサークル部室に行っても、皆が繰り広げる会話はすでに一回聞いたのと、そっくりそのまま同じ。
そう、葵海はタイムスリップしてしまっていたのだ!そんな中、唯一幼なじみの陸だけが、これがタイムスリップであることを知っている。僕も一緒に、時間を越えて戻ってきたんだ、という陸は葵海に、ずっと隠してきた秘密を打ち明けるのだが。。。
「君と100回目の恋」の監督やキャスト
監督・・・月川翔
出演・・・日向葵海役=miwa
長谷川陸役=坂口健太郎
松田直哉役=竜星涼
相良里奈役=真野恵里奈
長谷川俊太郎=田辺誠一
シンガーソングライターのmiwaがヒロインに抜擢。映画の中でももちろん、美声を披露している。長谷川陸はNHKの連続ドラマ「とと姉ちゃん」などで注目されている俳優さんだ。
「君と100回目の恋」の上映時間や日本公開日
上映時間・・・116分
日本公開日・・・2017年2月4日
配給会社・・・アスミック・エース
ジャンル・・・恋愛、青春、ファンタジー
「君と100回目の恋」を見た感想を口コミ!
冒頭からラブラブなのかと思いきや、恋は平行線
映画の予告編だと、とにかく両思いのラブラブカップルが、突然の悲しい別れで引き裂かれ、
何度も時間を巻き戻して悲劇を避けようとする・・・というものだったので、
とにかく最初から二人はラブラブなんだろうなーと思ってました。けれど、予想に反して、ヒロイン葵海の片思い状態。
一緒のバンドをやってる陸を、葵海はいつも熱い視線で見守っているけれど、陸はなんだかいつも別のことで忙しくしている。
量子力学や、なにやら難しそうな物理の参考書を広げて朝から晩まで勉強。バンドの練習どころじゃない、というような。そして、物理の大学院生の美女と一緒にいるのが、たまに目撃される。
葵海はいつも切ない。そして葵海がもうすぐ一年間のイギリス留学に行くことになっているから、その前にと、直哉は葵海に気持ちを打ち明けた。その時に直哉は陸に「葵海ちゃんに告白するからな!」と告げる。陸の反応は「すれば。どうして俺に聞くの?」とそっけない。
そして二人は平行線のまま、悲劇がおきてしまう。葵海がトラックに轢かれてしまうのだ。
二人が両思いになったのは、すでに悲劇が起きた後だった。
そして気づいたら、事故の一週間前に戻っていた葵海。
混乱する葵海に陸は秘密を打ち明ける。実は・・・自分は時間を巻き戻せる能力を持っていた、と。
能力というよりも、それは一枚の特別なレコードだった。陸の親代わり?のおじさん、俊一郎は元バンドマンでレコードを大量に持っている。そのうちの一枚は、それをかけた人の人生を、針をおとしたところから、もう一回繰り返せるというもの。
陸は昔からソレを使ってずるをしていたのだ。何回も時間を巻き戻してギターを練習したり。。そして、葵海の前でかっこつけたくて、それをしていた、と。昔から実は陸は葵海のことを好きだったのだ。そしてやっと両思いになれる二人。
でも、それが取り返しのつかないことが起こった後だというのが切ないポイントである。
けれど、時間を何回でも巻き戻して、ただの幼なじみじゃない、カップルとしての夏を、春夏秋冬を今はやり直せるのだ。
永遠の学生、永遠のカップルなんて理想的な気がするが。。。
そんなわけで、時間を巻き戻して、二人は今まで互いの気持ちを知らなかったからできなかったことをする。夏祭りに浴衣きて二人で出かけたり、星空の下抱き合ったり、ペンダントをつけてあげて後ろからそのまま抱っことか・・・図書館でキスとか・・・ああもうとにかく、大学生カップルのしゃーわせシーンのオンパレードである。。
しかも学生だから働かなくていいし。
なんて素晴らしい。人生のいいとこどりをずっと繰り返せるのだ!これって理想的じゃん!とか思うけど。。。
でも一つ、どうしても叶わないのが死を取り消すこと。。。
陸は、何十回も時間を巻き戻して、葵海を救おうとする。ある時は旅行に連れ出したり、どこか部屋に閉じ込めたり。。。けれど、それは取り消せなかった。
量子力学の勉強をしていたのもそのためだ。時間をなんとか取り戻す、取り消す方法はないかをずっと画策していたのだったl。
だから、あの夏のライブの日の夕方よりも先には進めない。そこを超えれば葵海のいない世界に生きなくてはいけないし、そんなことは陸は嫌なのである。
だから、何度でも巻き戻して可能性にかける。
でも、それを知った里奈は、「もう戻らなくていい!陸くんと一緒に過ごせた時間がとても楽しかったから!」と泣き、レコードを割ってしまう・・。
この辺は考えさせられた。
永遠に学生で永遠に初々しい恋人同士なんて理想な気がするが。。人間は、自然に年取っていくし、葵海と陸がうまく続いたとしても、父母になり、やがておじいちゃんおばあちゃんになり、ある日息を引き取る。時間が流れるというのは、いやおうなく老いていくことで、シミやシワが増えていき、生活に埋もれていくことでもある。
そういうふうに、変化していく方が幸せということはあるのだろうか??
さすがに、何十回も学生生活を繰り返していたら飽きるのかもしれなくはあるけれど。。。
人生の残り時間、何をして過ごすのが幸せ?
そんな問いを、自然と考えさせられてしまう映画だった。もしある日にこの世を去ることが明確に決まっていたら、その前は何をして過ごすだろう・・・。
多くの人が選ぶ答えが、誰か大切な人と、恋人と過ごす、というものだろう。
心の通う相手の手をとったり、抱擁したり、ともかく離れがたい感じで、何をするでもなく過ごす時間。。誰か大切な人のぬくもりに触れていること・・・
それは確かに、一番のしあわせだろう。
・・・と、パートナーのいない私は、ちょっと自分が失ってしまった心を思い出させれるような、少しうらやましいような気になった。
いいなあ、ぬくもり。ナンなんでしょうね、恋が深い時の、あの相手の手をとり目を見つめていると、どこまでも深い泉に沈んでいくような、あのエタニティな瞬間は・・・(放心)
泣かせまくるので、ちょっと腹が立ってきたぞ!
わりと最初のほうから陸が「君は生きる。僕が守るから」などといっているので、ああ陸は葵海をかばって代わりに死んじゃうのかな、と推測して、なんか悲しくなるわけなのだが、
まず葵海が戻らなくていい!とレコードを割ってしまう場面で泣くし、お母さんが留学する葵海に「いつでも帰ってきなさい」と告げるシーンでも、葵海の運命を知っているから泣けてくるし、最後にもちょっとした仕掛けがあって、とにかく泣かせる。
この恋愛力やら人間らしい心やらを失いかけた枯れ枯れ人間の私も泣いたのだから、まあ普通泣く。映画館のあちこちから鼻を啜る音が聞こえてきたのだった。
これって本当、卒業式でおきまりの「いざさらば」って歌みたいなものだ。明らかに泣かせようとしている。しかし泣いてしまう。。。
日本は愛しい=悲しいんだな。
皆さん、古典の授業で習ったでしょうか。「かなしい」という言葉は古来の日本では「愛しい」という意味で使われていて、区別がなかったことを。
この映画にもその伝統が流れているかもしれない。まあ確かに悲劇の中では、恋愛というものは盛り上がるものだ。今しかないと思うと、恋の永遠性が強調されるんだね、
しかし悲劇を起こさないと「愛しい」「愛」の感情を味わえなくなってしまっては不味いね。。。
miwaの演技力はどう?
シンガーソングライターのmiwaがヒロインに抜擢されていたが、特別にぎこちなさは感じなかった。凄く演技がうまいってわけでもないけど、とても自然だったと思う。
動き方に、独特の女の子っぽさがあるので、好みは分かれるかもしれないけれど。
坂口健太郎も、まずまず。一重のいかにもアジア人っぽい風貌が、とっつきづらいクールなキャラとマッチしていた。
私のお気に入りは、陸のおじさん役だった田辺誠一。のんびり落ち着いた大人の魅力があって良かった。
謎も残った
タイトルは「100回目の恋」。てことはもしかして、陸は99回時間を巻き戻して、ついに100回目でラストになったってことなのだろうか?
そうしたら、累積で生きた時間は、結局たぶんトータルで100年は超えている気がする。普通の人よりそう考えると全然長生きじゃん!
それから、葵海がライブ後、ポケットから落とした手紙には一体何が書いてあって、誰からの手紙だったのか?明かされないまま終わっていた気がする。。。。誰かこの謎、解けるかなあ?
まとめ
瀬戸内海、岡山県あたりを舞台にしているようで、ところどころで瀬戸内のおだやかな海や島の映像を見れたのは良かった。でも陸たち、岡山あたりにしてはやけに都会的にすぎるファッションだぞう?とかも思ったがw
砂浜や海のシーンも色々あるんだけど、でももう少し風景のきれいさにフィーチャーしても良かった気がしないでもない。
あと、映画自体は、タイムスリップものだから、何度も同じ場面を繰り返してしまう退屈さがありそうなものだが、最後まで先の展開が分からなくて、飽きることはなかった。
ひとつ文句を言うとしたら、あまりに平凡すぎるということか、出てくるキャラクターが皆、本当にどこにでもいそうな子達ばっかりで、そのへんに転がっているありふれた日常という感じ。
miwaの歌詞も「君が好きっていってくれて、とても信じられなくて、いつもの景色が全然違って見える」みたいな、なんというか普通すぎる歌詞だったりして、物足りなかったりはした。もっと面白いこと考えようぜ”!みたいに思ってしまった。
でも「あなたに会うために生まれてきた」みたいなどストレートな歌詞とかもあって、いつもならケッと思ってしまうのだが、この映画の切ない流れの中でみると、泣けた。
忘れていた大切な気持ち、人を思う気持ちを思い出したよ。