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目取間俊「水滴」を読んだ感想とあらすじ。沖縄はリゾートだけじゃない!【1997年芥川賞受賞作】

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今年2016年4月1日に、辺野古での抗議活動中、米軍に拘束された目取間俊さん。ずっと基地問題などの取り組んでこられた方のようだ。

サングラスがトレードマーク(??)

気になって、目取間氏の出発点となった「水滴」を読んでみた。

戦争体験や社会問題への意識が、突出せずに、文学として昇華されて、鮮やかな映画を見るようだった。

1997年に、第117回芥川賞を受賞

以下、ネタバレあり

 

目取間俊「水滴」のあらすじ

ある日、沖縄の老人、徳正が目覚めると、自分の足が途方もなくふくれあがっている。

冬瓜くらいの太さで、

しかもその親指の先からは、どこから湧いてくるのだか、透明な石灰質の水がこんこんと滴り落ちてくるのである。

妻のウシは、年取っても元気で癇の強い、シャキシャキしたおばあ。

畑仕事が忙しい時期に、こんな病気になってしまった夫に、むかっぱらを立てると共に、あまりに見物人が出てくると、「見世物じゃない」と、追い払うなど愛情も持っている。

徳正は寝たきりになってしまう。

しかも夜になり、妻のウシが部屋から去ると、ぞろぞろと亡霊達がやってくるのである。

沖縄戦で亡くなった日本兵達だ。

彼らは、一方の壁から現れては列をつくり、徳正の指先から水を飲むともう一方の壁から消えていく。

列は早朝4時頃まで、いつまでも途切れない。

面白いのは、彼らがとても礼儀正しいこと。

深ぶかとお辞儀をして、飲みおわると、「有難うございました」と言って去っていく。

 

この足先から出る水は、亡霊達だけでなく、生きているものにも奇蹟のような効き目があった。徳正の従兄弟清裕は、ふらふら暮らしをしているアコギな人物だが、

清裕がウシの手伝いで庭の草むしりをしているとき、偶然バケツに受けた徳正の水を撒き散らしておくと、そこの草花が異様に育つことを発見。

試しに飲んでみると、なんともう年老いてる清裕なのに下半身が超元気になる。物凄い精力の源なのである。

そんなわけで、清裕はペットボトルにこの水を積めて「奇跡の水!」として売り出し、あぶく銭を稼ぎ出す。

そして、日本全国風俗やキャバくら横断の旅をしようと、にやにやするのである。

 

一方、毎夜訪れる兵士達の亡霊の中に、徳正の戦友、石嶺が混じっているのを徳正は発見する。

彼だけ、おどおどしていて、何か怯えたような様子で飲んでいく。

実は、徳正は石嶺を裏切ってしまっており、そのことが長年胸につかて、罪悪感から酒に走ってしまっていた。

戦時中、爆弾が炸裂して、石嶺の腹部に当たり、徳正は、豚や牛を解体する時にみる臓物と同じものをそこに見る。もう助かりそうにはない。

石嶺を抱えて逃げようとするが、途中で、彼のものだった水筒の水を、あまりに渇いて徳正は飲んでしまう。そして一人で逃げてくる。

毎晩水を飲ませつづけ、徳正は石嶺に許しを乞う。

石嶺は最後、赦しを与える発言をして消えていく。

すると、亡霊達は来なくなり、徳正の足の水もストップ。

回復する。

 

清裕は、今までの儲けを抱えて本土に逃亡しようとするが、

今まで水を買った客達に囲まれてします。 なぜだか、その水を飲んだものたちは、最初は若返っていたのだが、いまやかえって年老いてシワシワになってしまい、「ひどいものを飲ませた」と憤っていたのだった。

 

鮮やかな映像が立ち上がってくる文章

ともかく、とっても視覚的。

映画を見ているように、鮮やかな南国の映像が浮き上がってくる。

マンゴの熟れた果実、繁殖する犬、負傷した兵士の亡霊、夜の森、

強烈な日差し、ハイビスカスの花。などなど。

映画にしたらいいんじゃないかと思ってしまう。

目取間氏は、映画製作にも携わっているみたいで、やはり視覚型の作家といえるかもしれない。

水の隠喩

水が複雑な、色々なものの隠喩になっていると思う。

まず兵士がよなよな列を作って水を求めて並ぶ・・・というのは、やはり慰安所のイメージを彷彿とさせてしまう。

さらに、この水を飲んだ者が精力抜群になる、というのも、水を親指の先をしゃぶって飲むというのも、この水が性的なものと、深く関っていることを示していると思う。

さらに、水は徳正が抱え込んでしまっていた罪悪感からなる、流せなかった涙の象徴でもあると思う。

また、石嶺が最後に赦しを与えて去る、というところからは、それは清めるものの象徴でもあるだろう。

きれいなものだけでなくて、時には水=貨幣=カネ、という俗っぽいものも表しているかも。

こんなふうに、水がジョルジュ・バタイユ並に根源的な生命力と結び付く存在として扱われている。深い・・。

 

そんなわけで、この小説おすすめ。

小説を読んでいると、正直あーなんか時間の浪費・・・と思っちゃうことも、しばしばあるわけだけど、これはまったくそう感じなかった。

久々に良い文学に触れたな~という感じである。

1997年のものだから、もう20年くらい前の芥川賞受賞作かあーー。

 

とりあえず、また最近の受賞作に戻る予定です。この小説並みに良いのにぶつかるといいなあ。。

それから、沖縄というのは、本当に非常に複雑な歴史を持っている土地だなあと改めて感じた。

本土の人からすると、とりあえず「ビーチ!」「リゾート!」ってイメージが強いし、歴史の時間でもあまり教えられないから知らないままだったりするけれど、太平洋戦争でも、沖縄は唯一、日本国内では陸戦が繰り広げられた場所で、物凄く壮絶であり、住民の犠牲者を9万2千人も出している。

恥ずかしながら私も、高校の修学旅行で沖縄に行って、地元おじいちゃんの戦争体験を聞いて初めて、そのことを知ったのだった。

 

米軍基地問題も、そういう歴史的背景があってのことなんですよね・・。

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