「万里の長城」は、実は人類を守るために築かれていた・・・という、何か異様な雰囲気に包まれる歴史を題材したファンタジーアクション、「グレート・ウォール」。
ジェイソン・ボーンシリーズが記憶に新しい、アクションスター、マット・デイモンが主演の、ド迫力映画だ。
アジアが舞台になることは、ハリウッド映画にしては珍しいのだが、感想や評判はどうなっているのだろうか。果たして面白いのか、つまらないのか・・・。チェックしてみた。
「グレートウォール」のあらすじ
この映画は、歴史的事実に基づいた映画ではない。
宋王朝時代が舞台だが、純粋にファンタジーで、万里の長城が本当は何のために建てられたのかをめぐる伝説をもとにしている。
時は12世紀。傭兵の一団が中国を横断していた。その中には、マット・デイモン演じる傭兵ウィリアムと、親友トバールもいる。
彼らは新兵器である、不思議な黒い粉(火薬のことか)を探しにやってきたのだ。だが一団のほとんどが、見たこともない怪物に襲われて命を落としてしまう。ウィリアムはなんとかその一匹を仕留めたが、中国の軍隊に捕らわれて、長城まで連れていかれる。中国軍は、ウィリアムが一人でどれだけの数の怪物を倒す力を持っているかを知りたがっていた。
万里の長城は、恐竜やドラゴンに似た怪物の群れから人間を守るために作られたことが分かる。怪物の数は何千匹にもおよび、その目的は首都を占領して、人間たちすべてを食い尽くしてしまうことだ。それができたら、怪物たちはさらに増殖し、世界中を支配することができる。モンスターは60年ごとに襲ってくる。
万里の長城を守っている軍人たちは、名もなき戦士たちと呼ばれている。
それまで自己中心的だったウィリアムは、次第に戦士たちの自己犠牲の精神に共感し、一緒に戦うことを決意する。
「グレートウォール」の監督やキャスト
監督・・・チャン・イーモウ
出演
ウィリアム=マット・デイモン
リン・メイ司令官=ジン・ティエン
トバール=ペドロ・パスカル
バラード=ウィレム・デフォー
ボン・ヨン=ルハン
チャン・イーモウ監督は「初恋のきた道」でも有名。さらにカンヌ、ベネチア、ベルリン映画祭で、次々に金獅子賞や、審査員賞を受賞するなど、国際的にも評価の高い、中国の巨匠である。
「グレートウォール」の上映時間や日本公開日
- 上映時間・・・103分
- 日本公開日・・・2017年4月14日
- 製作国・・・中国・アメリカ合作
- 上映方式・・・2D/3D
- 配給会社・・・東宝東和
- ジャンル・・・歴史、ファンタジー、アクション
「グレートウォール」の感想や評判
B級怪物映画になっちゃっている、というレビュー
チャン監督は、色彩や光、めくるめくようなアクションシーンが渦巻き続けるように映画を作っている。そのことは、やたらとナンセンスな脚本から観客の目をそらさせるのには成功している。(この脚本、3人がかりで書いたみたいだが・・・意味なし)
「グレートウォール」は、タイムリミットが来るまでに、どれだけ多くの、緑色の血をしたモンスターを倒せるかを競うビデオゲームみたいな感じだった。10分くらいは楽しいだろう。でもそれ以降は、退屈になってくる。
中国の観客の多くは、名匠チャン・イーモウ監督と名優マット・デーモンが組んだ結果が、B級怪物映画だったことにがっかりしているようだ。
ローリング・ストーン紙 ピーター・トラバース 要約
カラフルな戦士たちが観てて楽しい!という意見
イーモウ監督は、名もなき戦士団の演出について、色彩とスペクタクルを存分に発揮している。戦闘シーンは美しくも、滑稽でもある。戦士の部隊はいくつかに分かれているのだが、どの部隊も何か鮮やかな色をした兵器を授けられているのだ。(そのうちの一つは、単に巨大な太鼓をたたくためだけの部隊だ)
私が好きだったのは、ビビッドな青色の武器を持った部隊。この部隊は自分の腰回りにロープを巻いて、槍を握りしめ、長城から跳躍し、怪物たちを突き刺すのである。突き刺したら、バンジージャンプみたいな感じで、上に戻っていく。
名もなき戦士たちが、こんなふうにカラフルで面白いのは良いことだ。なぜって、モンスターは、見た目てきには、灰色をしたイボイシシの群れみたいな感じで、あまり面白くないからだ。彼らのアクションシーンが、ウィリアムらの探検シーンで何度か妨げられるのは残念だった、その探検シーンはつまんなかったから。
「グレートウォール」は決して、凄い傑作というわけじゃないが、まあまあ楽しい映画だった。
SFist紙 レイン・ジョキネン評 要約
演技がよくなかった、という感想
視覚的にみて、素晴らしいところもあるのだが(熱気球に乗った戦闘部隊や、モンスターの女王、扇形の裾をつけた女王の護衛である怪物たち)は、脚本や演技のまずさによって足を引っ張られている。物語の展開も前もって予測できてしまう。
一番がっかりだったのは、マット・デーモンの演技だったかもしれない。アイルランド人という設定みたいだが、イギリス人俳優がアメリカ人のふりをしているような、単調なもごもご声で話している。
中国の観客にもアメリカの観客にも受けようとしているために、色々犠牲になっている。会話や主人公たちの持っている動機や、キャラクター造形が、単純になっている。その方が、どの国の人にも誤解がないから。それで、どの国の人にも分かるような、爆発シーン、戦闘シーン、CG効果の嵐となっている。
「グレートウォール」で一番面白かったのは、視覚的なことは別にすると、やっぱりアメリカ映画には見られない独特な雰囲気があったことだ。美術的なことや、人々の考え方などの面で。(より大きな善のために、自分を捨てて、権力秩序に従うというテーマは、イーモウ監督の以前の作品では欠陥と考えられていたけれど、今回の映画では、それほど鼻についてはこない)
アトランティック紙 クリストファー・オル評 要約
「グレートウォール」についての一般観客の感想を拾ってみた!
- 出てくる女性が色っぽくて、キュートで、もう一回見にいって彼女とデートだ!
- 物語はありきたりだったけれど、十分に観客を楽しませる映画だった。
- ずっとつまらなくて退屈だった。CGIは、まあ許容できるといったレベルだし、デーモンは変なアクセントで喋るし戦闘シーンは、すぐ飽きちゃう。
- 家族で見るのにいい楽しい映画。中国の武術やCGによる特殊効果が楽しめた・
- もう一回見にいくような価値はないけど、一回だけなら楽しいB級映画か。
まとめ
今までに名作映画を撮ってきて、国際的な舞台で数々の賞もとっているイーモウ監督の作品だけに、期待も大きかったようですが、肩透かしだったようです。
歴史的超大作!みたいなのを期待していくと、当てがはずれるかと。
物語は完璧にファンタジーで、かなり単純なストーリーになっちゃっているようです。
マット・デーモンの演技がひどい、というのは主に、彼が「グレートウォール」ではアイルランド訛りで話そうとしていて、それがぎこちないっていうのが一番の原因みたいです。
ここらへんは、日本人には全然気になりませんね。今、ハリウッドは、中国でも映画がヒットするように色々作戦を立てていることもあるみたいで。(何しろ巨大な市場ですから)。
「インディペンデンスデイ2」でも、中国の俳優が起用されていましたが、本作も、そういうアプローチの一環ともいえるかもしれません。
でもまだまだ、うまくいっていないみたいですね。