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「ASKA700番」第1巻の感想。芸能人はなぜ薬物に走る?

 

 ちょっとミーハーだが、お茶事件や逮捕事件など様々な点で話題になっていた、チャゲアンドアスカの、ASKAの手記が発売されたので読んでみた。

 まず理由としては、あんなに人気もあって名曲も出していて、つまりはお金も名誉も、すべてを思うまま手にしているように見える人が、どうして薬物に手を出してしまうのか??という疑問があった。

 満ち足りていそうなのに。何かの中毒というと、現実に満足できなくて手を出してしまうものというイメージがあったのだ。

 とりあえず読んだ感触は最近読んだ村上春樹の「騎士団長殺し」を彷彿とさせてしまった・・・。ともかく何が真実で何がバーチャルなんだか境目が分からないのだ。

ある意味これは凄く現代的な事態なんだろう。

そして、芸能人って・・・やはり相当暮らしにくいんだろな。。。と思った。

アスカはめっちゃ普通の人っていう感じがした。歌がうまい普通の人。

そして普通の人が生きていくには芸能界は伏魔殿過ぎるのかもしれない。

有名になると日本を脱して、外国で暮らす芸能人たちって多い。そりゃあこんな現状なら、離れ小島やアメリカやフランスやら、誰にも知られない場所で生きていきたいだろう・・・。

 

ASKAが薬物に手を出した理由は?

薬品を摂ることにあまり抵抗がなかった

 まず土台としては、アスカは小さい頃から偏頭痛持ちで、薬はしょっちゅう飲んでいたため、

薬物で体調なり気分なりをよくすることには、あまり抵抗がなかったようだ。

 たしかに、ある薬物を使ってはいけないのは、それがたまたま法律で禁止されているかされていないかという一点だ。合法の薬の中にも、もちろんキケンなものは色々あるわけで、アルコールや煙草だって中毒性がある。

 そして、アスカが最初に使ったのは、イギリスのディスコでエクスタシーという錠剤だったという。これはダンスクラブなどで若者がよく使うものらしいが、アスカはこれを飲んで、心がとても開放される経験をしたという。

 「みんな好きだー」とスタッフに言い、周りの人々とハグし、こんな素直な気持ちになれるなんてすばらしい、と思ってしまったらしい。

 こういう現象は、お酒に酔った時も起こる。アスカはお酒が飲めないので、ますますこの経験が印象深かったらしい。そして、イギリスではこれが医療用にも使われていることを知って、日本に帰ってから、医療関係者に聞いてみるが、日本では禁止されていることを知って、しばらく忘れていたという。

 ・・・やたらとすぐに薬品を摂取したがる現代人。健康マニアな私などは、正直普通の抗生物質すら、体に良くないのは知っているので飲まないようにしているが、割と皆、強い成分の入っている風邪薬その他をよく摂取している人は多い。

 確かに、気持ちが素直になるのはいいけれど、薬の力で簡単にその楽しさを得ようとしちゃうのは良くないのだろうなあ・・・。ランナーズハイみたいに、もっと健康的にナチュラルに入手すべきなんだろう。

 

常に誰かに見られている、という芸能人のつらさ

 それから、「700番」を読むと、やっぱり、ASKAを一番追い詰めていたのは、芸能界というある意味歪んだ世界だったんじゃないかと思った。

 例の、盗聴盗撮疑惑である。

 「700番」の中でアスカは、ずっと自分の身辺を監視している集団がいることを主張している。いわく、自分が電話で話したり、友達にメールしたりした内容が、そのまますぐにネット上に発表されていることに気づいたというのだ。ある掲示板にそのような書き込みがされていて、あるハッカー達が集団で、自分の個人情報を盗むゲームをしているというのだ。

 それについての証拠をパソコンに保存したとたん、機器が壊れる(破壊される)などしているのだという。CD-Rに何十枚分も証拠データは集めていて、弁護士にも相談しているという。

 しかし音楽事務所の人たちは、アスカの妄想だといって、真剣に受け取ってくれない、でも集団盗聴は事実なのだ、とアスカは主張していた。

 

 ・・・ここのくだり、判断が難しかった。

確かに典型的なパラノイアっぽい症状みたいにも見えてはしまう・・・。

 でも、アスカが盗聴されていると思ってしまうのにも理由があって、

実は飯島愛ちゃんも、生前は集団盗聴されていて、その悩みをアスカに打ち明けていたのだった。(ちなみに愛ちゃんは、これからは個人がネットで動画を発信していく時代になることを見抜いていたような、相当頭がきれる人だったようだ)

もう一人、アスカの友人も集団ストーカーと盗聴に悩まされている人がいたらしい。

 

 で、「700番」の中には、アスカを執拗に追い回して嘘をかきまくる、ハイエナみたいな、週刊誌記者が実際に出てくる。

 芸能人というのは、常にマスコミに追い掛け回されて、やれ誰かとデートしてた、といっては噂をいいふらされる、ある意味、おおやけの場で常にストーカーされているような、悲しい立場だ。

 こういう実経験があると、それが心の中で膨らんでいってしまってもまったくおかしくない。

 それに、アスカの話を、単なる妄想と否定しさることも、なかなかむつかしい。

 

 一昔前までは、まさかそんな、と思われたような盗聴が大々的に行われていることは、元アメリカのエージェントだったスノーデンが明かしているところだ。

 携帯やパソコンなどは、たとえ電源が入っていなくても、凄腕ハッカーからは侵入・遠隔操作できてしまい、盗聴(マイクついてるし)や盗撮(カメラついてるし)だって可能だ。

 フェイスブックの、CEOザッカーバッグが自分のPCのカメラにシールを貼ってふさいでいるのも有名な話だ。今は普通の人でも、不正アクセスされたときのため、カメラレンズをシールで隠している人は多い。

 そんなわけで、アスカの主張には現実味があることも確かなのだ。

 だから読んでいると、何が正しいのかよく分からなくなってくる。カフカの世界である。

 ともかく、とりわけ芸能界では激しい、衆人監視環境が相当ストレスになっていたようではある。これも、薬物に依存してしまった原因の一つのようだ。

 

芸能界はヤクザな世界なのか

 そして、どこからともなく、胡散臭いやからが、芸能人にたかりに来ることもよくあるみたいだ。時折、芸能人とヤクザの関係性は報道されたりする。

 ファンのふりをして(まあ実際にファンなケースもあるのかもしれないが)、アスカに近づいてきて、漁師がもうからないから、バーなどお店も持っているんです、という一見それほどアコギな方面の人には見えない人々が近づいてくる。

 で、アスカは脇が甘いな~とも思った。知らない人なのに、間違って楽屋に通してあげちゃった強引なファンとスタッフと一緒に、飲みに行ってあげる。そしてだんだん相手は、電話を時折かけてくるようになってきて・・・というパターン。

 裏街道の人たちにとっては、芸能人というのはお金を持っている割に、脇が甘いから、いいカモなのかもしれない・・・。

 

アスカの自伝だけど、歪んだ現代についての記録でもある

 そんなわけで、結局結論としては、芸能界というのが、あまりに現代社会のひずみを

映し出しているんだなあと思った。普通の人は、一歩間違えれば、こうやってアスカみたいに道を誤ってしまう。

 アスカといえば、とても綺麗な歌声だし曲は大ヒットしていたわけだし、なんとなく天才的なイメージを持っていた。

 だけど、「700番」を読んで感じたのは、ある意味めちゃくちゃ普通の人だったんだなーってこと。もちろん、歌や作曲能力は天才的なものがあるのだろうけれど、

文章を読む限り、キャラクター自体がめちゃめちゃ特異、とか考え方や論理が凄い!とか、自分の世界がある!っていう感じでもなく、本当のそのへんに暮らす、一般の普通の人、ちょっとまっすぐすぎるとこもあるお兄ちゃん、っていう感じがした。

 こういう普通の人にとって、、芸能界っていういびつな世界はかなり、気をつけてないと罠にはまる世界なのだろう・・・。

 

大手マスコミVS個人メディア

 今、色々なところで特に大手メディアの、嘘体質だの、権力をかさにきて、横暴で、くだらん芸能ニュースばかり流して、ちゃんと社会的に重要なニュースは流さない、という体たらくが指摘されているところだが、それを「700番」を読んで再確認してしまった。

 お茶に薬物を混入させたことによる、アスカの不当逮捕も記憶に新しいが、本当に虚実入り乱れた世界である。嘘にしたって、その嘘をつきまくり、報道しまくっていれば、いつかそれが真実に変わる、とでもいう勢いなのだ。

今回の本「700番」である意味、アスカは自分の個人メディア、ブログという場所からささやかな反撃を始めたところなのかもしれない。

  どこか平和な外国とか住んで、へんなマスコミから離れてゆっくり曲でも作ってほしい。

 そしてたぶん今後、こういう個人メディアがもっと力を持っていくようになるのではないかなあ。

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