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映画「ノーカントリー」感想。痺れるほどのスリル‼コーエン兄弟のアカデミー賞受賞作。

險路勿近 No Country For Old Men

 コーエン兄弟、前から好きだったけれど、改めて凄いと感じた。第80回アカデミー賞で、作品賞はもちろん監督、脚色、助演男優賞も受賞している。映画は多少斜に構えて見てしまう時もある自分だが、今回は掛け値なしで、マジで画面に釘付けになって、次は何が起こるんだかとハラハラしながら見てしまった。スリル&サスペンス好きにも、そうじゃない人にもこれはおススメである。ちなみに原題は「no country for old men」で「年寄に住む国はない」てほどの意味か。「ノーカントリー」だと「国がない」とか「国じゃない」みたいな意味になっちゃうので大分イメージ変わりますな。

 

映画「ノーカントリー」のあらすじ

 アメリカ合衆国の、メキシコとの国境地帯で保安官を務めるベルは、最近の犯罪の凶悪化を目の当たりにしている。何の感情もなくガールフレンドを撃ちころしたティーンズなど・・。(日本の現状にも通じるものがある・・)

 そしてここにまたキャラの濃い、冷徹なシリアル・キラーが登場した。ギャング業界の一端で一匹狼的にさまよっている。冒頭からたちまちのうちに、裏組織の者たちから、さほど関係のない一般人まで無表情・無感動でドライに始末しまくるこの男。

 どうやら、銀行強盗か何か分からないが、札束が入ったトランクを取り返す役割を、引き受けているらしい。

 モスは退役軍人で、猟をしに砂漠に入っていたのだが、偶然に彼らのしんだからだが転がっている撃ち合いの現場に出くわしてしまう。そして偶然、札束の入ったトランクを発見。軍人だからなのか、さほど動転することもないモスは、何を考えたのだか、そのトランクを今度は自分が持ち逃げしてしまう。

 だが、そのトランクには、追跡装置が仕込まれていたのだ。それを基にシリアルキラーがモスを追ってくる。さらに、アメリカの犯罪組織の方も、シリアルキラーのシガー(シュガー砂糖と似た響きなのが皮肉)を追う探偵のような者を派遣する。クレイジーな者たちが対決する中で、一体誰が最後まで生き残るのか?

 

ノー・カントリーの監督や俳優

監督・・・ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン

出演・・・ベル役=トミー・リー・ジョーンズ

     シガー役=ハビエル・バルデム

     モス役=ジョシュ・ブローリン

 

  • 上映時間・・・122分
  • 日本公開日・・・2008年3月15日
  • 原作・・・コ―マック・マッカーシー「血と暴力の国」
  • 配給会社・・・パラマウント/ショウゲート
  • ジャンル・・・スリル&サスペンス、クライム

ノーカントリーの感想!(ネタバレ有)

シリアルキラーのシガーが、とにかくクレイジーでやばい

 これはもう、何といっても演技が物凄く効いている。アカデミー助演男優賞も頷ける。まず髪型が変・・・。ボブカットにしていて、このストレートなロン毛がいつも乱れていない。物凄くきれーに左右に流されている。そして映画中で一度も、顔の筋肉を動かしていないような気がする・・・。それほど無表情で、ほとんど笑わないし、怒りの表情も見せないし、苦痛もあまり表に出さない。

 モスとの銃撃戦によって腿に傷を負った時も、薬局から麻酔薬と消毒液をくすねて、自分で麻酔を注射して弾丸を取り出してしまう。お前はブラックジャックかよ!と突っ込みたくなることしきり・・汗

 そして、ともかく無表情でヤバいことをやりまくる。薬局から麻酔を盗んだ時も、布切れで即席の導火線を作り、表にとめてあった車のエンジンを着火させて爆発炎上。人々がそれに気をとられて騒いでいるうちに、商品を持ち逃げするのだった。

 それから人々に話すこともかなり支離滅裂で、話しかけられた一般人は呆気にとられてしまう。「ダラスの方から来たのかい?」というガソリンスタンドの主人に「あんたに何の関係があるんだい。あんたは俺の友達か?」と聞いたり、「ほかに何か注文ある?」と聞かれ「知らん。あんた知ってる?」と聞き返し、「何か気にいらんことでもあったかい?」と聞く店主に突然コイントスを持ち掛ける。

 コインを弾いて、「裏か表か当てろ」と店主に迫る。この時、私たちはシガーがシリアルキラーだと知っているので、店主が負けたら、銃で撃つつもりなんだと分かる。それでもって非常にハラハラさせられる。

 彼は一度も声を荒げたりしないのも特徴的。いつでも落ち着き払っていてあくまで静かに淡々と狂気をにじませる。迫力ある演技だ。

これに対抗する男達も十分にクレイジー

 偶然札束入りのカバンを拾ったモスにしても、生活が苦しいのか?などの予想は立つものの、わざわざ危険をおかして、犯罪組織の金を持ち逃げする動機はイマイチ分からない。この退役軍人モスも、かなり根がクレイジーなのだと思う。銃撃戦で傷を負いながらも、自分で処置して、メキシコ側に逃げ、シガーにも傷を負わせることに成功する。このモスの行動にしても予測できないので、観ているとダブルでハラハラさせられるのである。

超ドライに登場人物がバタバタ倒れていく

 中盤で、カウボーイハットをかぶった私立探偵のような、ならず者のような者が出てきて、シガーを追いかけ、モスを守るかわりに、モスから金を貰おうとする。彼も相当キャラが濃く、演技もうまいのだが、これが割とすぐにシガーに後から付けられ、かなりあっさりとあの世送りにされてしまう。かなり活躍しそうだった矢先なのに、惜しげなく。

 こういうドライな乾いた感じが、コーエン兄弟の持ち味。感情ゼロ。

映像や雰囲気は素晴らしい

 そしてストーリーの展開を追うだけでも手に汗握るし、何か脳みそが刺激される感じでスリリングなのだが、それに加えて映像美がある。メキシコ国境の街の、黄色い砂が常に空気に漂っているような乾いた光。そして画面の絵の構成の美しさ。色彩の綺麗さ、見ていて飽きない。

 それから、いかにもアメリカらしい安モーテルを、主人公モスと、それを追うシガーは転々とするのだが、このモーテルの雰囲気も、いかにもという感じで趣がある。

まとめ

 結末については賛否両論あるかもしれないが、あえてスリルを味わってほしいので、ここでは言わないでおく。それにしても本当に久しぶりに、心から堪能できた映画であった!このドライさと、何をやらかすのか予測もつかないクレイジーな人々というのは、個人的にはデビッド・リンチ監督の作風を想起させる。リンチ好きなアナタは必見。そうでない人にも、ともかくおすすめできる。

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